たいばに。
□その温もりをいつまでも
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夢を…見た。
僕は長い道の上に立っていて、目の前には無数に枝分かれした道が広がっている。
夢か現実か、ふわふわとした頭で漠然と僕は目の前の道々を見ていた。
しかし、夢の中で目的というものは案外はっきりしているもので。
この中から一つの道を選ばなくてはいけない。
そんな脅迫じみた想いが僕の中を巡っていた。
試しに一つの道に足を踏み入れてみる。
…瞬間、頭にイメージが雪崩れ込んでくる。
イメージの中…、そこにいたのは、今より少し若い僕と、自分の知っている顔よりいくらか老けた父さんと母さん…。
これは…誕生日パーティーだろうか…。テーブルの真ん中にあるバースデーケーキには『HAPPY BIRTHDAY!!Our Dear Son.』と書かれた板がついている。
じゃあ、…いま祝われているのは僕か…。
バースデーケーキの前に座らされた僕は、ろうそくの灯りからか恥ずかしさからか頬をほんのり赤く染めていて…。
ろうそくの火を吹き消した後、両親に両側から抱き締められる…、もう恥ずかしいな、やめてよっ…。とか嫌がるそぶりをみせながらも、くすぐったそうに、そして幸せそうに僕は笑っていた…。
しかし、イメージは突然バチンッと弾かれるようにかき消される。
そして、足元に揺れを感じた刹那、崩壊していく道、道、道…。
初めに踏み込んだ道も崩れ落ち、追いたてられるように残された道に進みただ走る。
先に何があるかなど知りもしないままただ走る。
選択権などなしに進まされた道もやがては崩壊を始め、もつれる足で必死に前へ進み、しかし崩れ落ちる瓦礫が自分に追いつき、もうだめだ、と思った瞬間。
どこからか光と共に手が伸ばされる。
そして僕は、その手にすがるように飛び込んだ……───
…そこで目が覚めたのだった。
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