たいばに。
□猫の日だって
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(兎虎)
猫。猫は好きだ。
まぁ何派かと言われれば、俺は断然犬派なのだが。
でも今日は年に一度の猫の日だから、特別にうちの猫を甘やかしても罰はないと思うので…。
「よーしよーし。」
「……、多分聞いても馬鹿げた答えしか返ってこないと思いますが、一応聞きますね。…何してるんですか虎徹さん…?」
「ん?何って…。甘やかしてるだけだけど?」
長々と続くバニーちゃんの嫌みにも聞こえる言葉を、軽くスルーしながら俺はそう言うと、デスクに向かうバニーの頭をわさわさと撫で続ける。
「なんですそれ?というかなんで。」
バニーはパソコンから目を離して、眼鏡のブリッジを押しながら呆れ顔でこちらを見上げる。
それだけで結構満足している俺は、もしかしたら少し寂しかったのかも…、なんて思ったり。
「猫の日だから。」
「…」
俺の言葉に眉間の皺を深くしたバニーはすぐにネットで「猫の日 意味」と調べだす。
ダメだな若いのは、すぐにネットに頼って。
しばらくして何回かクリック音が聞こえた後、小さくバニーがなるほど、と言うのが聞こえる。
「はぁ、猫好きなんですか虎徹さん?」
この流れで完全に気が削がれたのか、椅子をこちらに向けて仰ぎ見るバニーには嬉しさを感じたが、最初のため息はいらなかったと思う。
というか…、
「なんだよ、理由聞かねーのか?」
「聞きませんよ。どうせ録でもないでしょうし。」
失礼だ、とても本当に失礼だ。
ぷくぅと膨らませた頬に不機嫌を溜め込んでいると、で?とバニーが再び口を開く。
「好きなんですか?」
「何が?」
「人の話聞いてくださいよ…。猫です、猫。」
あぁと相づちを打ち、んにゃと首を振った。
「俺はどっちかっつうと犬派。」
今度はバニーがあぁ、と相づちを打ち、何故か少し不機嫌になる。
なんだ?真似か?俺の真似してんのか?
「…その、僕としてはとても不本意なんですが、虎徹さんから見て、僕って兎なんですよね?」
しかしそういう訳でもなかったらしく、しかもバニーにしては珍しく自ら兎ネタを持ち出してきた。
「へっ?…あ、あぁ、まぁ…そうだな。」
寂しいと死んじゃいそうだし。
と言うのは口には出さず、胸にしまっておくが、急にバニーは「気に入りませんね。」と言って立ち上がったので、顔に出てたのかと内心焦る。
「な、なにが…。」
「………………」
むすっとした顔のバニーが、急にくいっと顎を持ち上げた。
いきなりのことにむっ!?と変な声を出してしまったが、それもすぐにバニーの口に吸い込まれてしまう。
「………へ…。…へ?」
それはつまりキスをされたということで。
まるでついていけないバニーの行動に間抜けな声を上げてしまうが、当のバニーは、自分から仕掛けてきたくせに耳まで真っ赤にしていた。
「…あなたは……、僕が好きなんでしょう…。」
しかもそんなことまで言うもんだから。
(………あぁ、もう…。)
うちの兎(バニー)に完敗。
今日から兎派に転職
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