たいばに。
□小さな約束
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「ほ、ほんとにいいのかな…?こんな遅くに屋上だなんて…。」
屋上へと続く階段を、なるべく音を立てないようにして登りながら、その前を堂々と歩くエドワードについていく。
控えめに絞り出すようにして出した声も、非常灯だけというこの薄暗く静かな空間には響いてしまいそうで怖かった。
「ったく、何回目だよイワン。
大丈夫だって言ってるだろ?警備員が屋上見回んのは1時に決まってるんだよ。ちゃっと見てぱぱっと帰れば見つかんない。」
呆れたようにこちらを見下ろすエドワードは、ひそやかな声で喋るものの足音や行動の一端にはまるで慎重さを感じられず、それに内心ヒヤヒヤしながら、で、でも…とさらに言葉を続けようとすると、エドワードはいいから!と肩に腕を掛けイワンを強引に進ませた。
これでは先程と同じだ、
と最初部屋で行こうと言われた時に、渋っていた所を同じように強引に連れ出されたことを思い出し、我ながら情けない…、なんて思っているといつの間にか屋上の扉は目の前に迫っていて。
さっそくポケットから鍵を取り出したエドワードは、勝手知ったるかの如く扉を開け、屋上へと出ていった。
(ちなみに、屋上はエドワードのお気に入りの場所であるので、一年ほど前に勝手に合鍵を作ったのだという。きっとバレたらかなり怒られる…。)
先を行くエドワードに慌ててついていくと、すぐにエドワードはタンクがある上の方へと梯子を使い上っていく。
まだ戸惑いが拭いきれず躊躇っていると、上り終えたらしいエドワードが催促をするようにこちらを手招いた。
「やっぱりだめだよ…!」
本当はそう言ってやりたかったが、吐き出した息に言葉はのらず。
いい加減決心がつかない自分に嫌気がさし、短く息を吸うとイワンは梯子に手をかけた。
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