たいばに。

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辺りは沈黙に包まれ、そよいでいたはずの風も波も、嘘のように静まり、二人の行く末を見守っているようで…。


再び何かしゃべるべきかと虎徹が模索し始めた頃、ただ虎徹の言葉を静かに聞いていたバーナビーの肩がぷるぷると震えはじめる。


「…ば……」


「え?」



.「…っばっっかじゃないんですかっ!!?」



「っ!?!?」


急に立ち上がったかと思えば、ものすごい形相で虎徹に怒号を放つバーナビー。
そのボリュームに、虎徹は目を白黒させた。



「自分がいつか死んでっ!!そしたら僕が悲しむから!!だから僕の気持ちには応えられないっていうんですかっ!!?」


立て続けに言葉を放つバーナビーは、もはや周りの目など気にしてないようで。

そこが人通り少ない角地で、しかも時間帯が早かったということに虎徹は感謝しながら、なんとかバーナビーをなだめようと試みる。

「バ、バニーちゃん?
ちょ、ちょっと落ち着こうっ!
おじさんが悪かったから、一回ちょっと落ち着こ…」



「だまらっしゃいっ!!」



「は、はいっ。」


バーナビーの剣幕に気圧され、あっけなく終わってしまった虎徹の試み。

もはや落ち着かせることなど無謀に等しく、虎徹はなぜか正座をしていた。



「しかもなんです?
与えられる人生を送ってほしいって!
まるで今まで何も得るものがなかったみたいな物言いじゃないですか!!」


「い、いやそういう意味じゃっ…」



「僕が今までっ!ただ失っていただけだと思わないで下さいっ!!」



虎徹から目を反らすことなく言い切った言葉。

それは多分、バーナビーが心の奥底に溜めていたもので…。



「確かにっ…僕は多くのものを失ってきました…。
不条理に奪われたものも、自分から捨てたものも…。」


あの事件から、バーナビーは不幸を知った。絶望を知った。

普通の子供なら持っているはずのものが、自分にはもうないことも知り、
かわりに、その子供にはなくて、自分にはあるものを知ってしまった。


それはきっと、可哀想だとかそういった名の烙印(レッテル)。






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