たいばに。
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「僕は…、“愛”というものがまだよく分かりません…。
両親からうけた愛情を、忘れたわけではないんですが。
それでも、僕の中で愛を感じなかった時期が長すぎて…」
分からなくなってしまったんです…。
そう言ってまた口を閉ざしそして小さく震えた背中を、虎徹はただ見つめた。
俺だって分かんねぇよ…。
唇を噛みしめ、心の中で吐き出すようにそう呟く。
今のお前になんて声をかけるのが正解なのか、
どうすればその背中を小さく感じなくなるのか…、全然わかんねぇ…。
そうして幼い頃のバニーを想う。
なんの前触れもなく訪れた別れと絶望は、彼をどう変えたのだろうか…。
彼に何を与え、何を奪ったのだろうか…。
家族?家?
いや、きっと目に映るモノだけではなかったはずだ。
だが、その失った物を全て理解するには、それはあまりにも多すぎ、そして、彼はあまりにも幼すぎた…。
やがて、彼に訪れた絶望は復讐へと形を変え、それが彼の生きる意味となってしまった。
間違ってる、とは思わない。
だがそれが正解なのかと言われると、正直言葉に詰まる。
まず、同じ状況下に居たことのない自分が、彼の気持ちを理解するなんて百年早いのだ。
だからこそ、彼にかける言葉もわからないし、まず、彼の20年間の孤独を、簡単に言葉にして慰める事など今の俺にどうしてできようか……
噛みしめた唇をさらに強く噛む。
何もしてやれない…
する資格などない…
わかりきった事実がじわじわと俺を蝕んで…。
くそっ…吐き気がするっ…!
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