短篇集
□産まれ堕ちれば、死んだも同然
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人手を作りだすのだから、つまらぬ機械など作っても仕方がない。
どうせなら私の義骸技術と義魂技術を磨き上げ、それをすべて使って、どこの誰にも作り出せない最高級のものを造ろう。
それは既にものではなく、「人間」だ。
また凡人を手元に置く気はさらさら無いし、一々思考や理論を説明してやるのも面倒だ。
私の考えを自然に理解できなくてはいけない。できるだけ私に近い者となるよう、私自身の遺伝子情報のみを使おう。
それは既に作品ではなく、「実子」だ。
娘にした。
目障りな色が視界にちらつくのは困ると消去法で考えたら、黒髪黒目になった。
十数年、夢中で研究した末完成して目覚めた「娘」は、思いのほか私に似た面差しをしていた。
ゆっくりと身を起こし、ゆっくりと周囲を見回して私の姿を娘は認める。
似せたつもりは無かったが、薄い眉根や目の形は毎朝鏡で見るそれと酷似していた。
私の顔をしばらく見て、娘は薄く口を開き、私が調整した通りの声で、小さく最初の言葉を吐いた。
「・・・マユリ、様・・・ですか?」
―――聞くところによると、男も自らの実子が誕生した時には強い感動や愛情、使命感などを抱くという。
そんな感情を私は抱かない。愛情などという非合理的な感情を、私は自分の裡に認めない。
娘に名前を呼ばれた瞬間、何故か頭に血が上った。
あまり一気に血が上ったものでくらくらとした。
錯乱してそのことに腹が立って、娘が再度口を開く前に私は娘を殴り飛ばした。
崩れた娘はきょとんとした顔で頬を押さえた。
一度殴ると多少落ち着いたので、先ほどの娘の問いに答え、今後叩き込む知識や技術に先立って教えるべきことを伝えた。
「・・・そうだ。私が涅マユリだ。
お前の名は、ネム。
涅、ネムだヨ」
言うと娘はハイと応えた。
「・・・くろつち、ねむ。」
音を確かめるように復唱した娘は、口角を少し上げて嬉しそうな顔をした。
こちらが理由の解らぬ苛立ちを必死に抑えているというのに、その微笑みに尚更腹が立った。
生まれてくるなり私の合理性を撹乱した娘を、私はいっそ憎んだ。
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