夢見処。

□日常からの逸脱→幸せ
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「駄目だしんどい…村に帰りたい……」

最近は毎日目覚めるとこの台詞を呟くようになってしまった。
ホームシック、とでもいうのだろうか。
いかんせん体が重くてしょうがない。
田舎に帰ってゆっくり羽を伸ばしたい。

「ステラ、もうそろそろその台詞やめて貰えると助かるんだけど…」
「あ、ゴメン今のところやめる予定無いですすみません」

食堂に行ってもこの台詞を連発しているので、隣に座るアルミンからも同じような台詞が連発される。
今日も昨日も、たぶん明日も。
向かいのいつもの席にはミカサとエレンの姿。今日もあの二人は仲がいい。
ハンナとフランツ以上に夫婦っぽい、と私は思っている。

ここで、常日頃思っていたことを口に出す。
いつもの日常では言っていなかった台詞だ。

「早くお前ら結婚しろよ」

ちょっかいを掛けてみるといつもと違う展開になるものだから面白い。
エレンは「はぁ?」とでも言いたげな顔。ミカサは赤面、アルミンは苦笑い。
ちなみに遠くでジャンが飲んでいた水を噴き出していました。汚いです。

「だってさだってさ、こう毎日毎日目の前でラブラブイチャイチャしてたら見てるこっちがじれったいし」

びしいっ、と効果音が付きそうなほど勢いよく二人を指差す。おっとお行儀が悪かったかな。

「あー、ステラあのな?ミカサは家族であって、そーいう恋愛感情とか持ってないから。ほら、姉貴みたいなもん。アルミンも家族だしな。な、アルミン?」
「うわぁミカサ可哀想ー」
「…いや、家族同然、つまり夫婦同然。アルミンは私たちの子供。そういうことが言いたいのよ、エレンは」
「なるほど合点!!」

いつもと同じ冷静さでさらり、と述べられた意見にぽん、と手を打つとエレンがいやいやいや違ぇから。とツッコミを入れてくる。いやいや違わねぇだろ。
ちなみに隣では話を振られたものの返事をするタイミングを逃したアルミンが口をパクパクさせていた。
しばらくするとエレンが視線で助けてくれ、とメッセージを送っていたが無視する事に決めたらしい、もそもそとパンを頬張り始めた。

「ミカサ美人だしさー、なんでもできちゃうしいいお嫁さんになると思うよ?あ、間違えたもう既にお嫁さんか!!」
「いや、違う。エレンが私の嫁」
「おいおい何回言ったらわかるんだよ、ミカサは家族!!か・ぞ・く!!嫁なんかじゃねぇし、ましてや婿でもねぇ!!」
「またまた照れちゃって」
「…チッ、そもそもオレはミカサと結婚する気なんて更々ねぇし」

今の一言で場の空気が凍りついた。KYで有名なサシャとコニーでさえも黙ってこちらを凝視している。
しばらくの沈黙の後、少し離れた場所でガタンッ、と椅子を引く音がする。

「てめえ、いい加減にしろよッ!!羨ましすぎるんだよ馬鹿野郎!!!!!」

あーあ、また始まった。
ジャンがエレンに掴みかかる。

「羨ましいってお前こそ毎回毎回何なんだよ、別にミカサ普通じゃねぇか!!」

エレン君。今一つ忠告するとすれば、そう思っているのは君だけだという事です。
女である私から見てもミカサは美人。しかも才色兼備で本当の美人だ。
こんな身近にこんなに美人な人が居るなんて、どれだけ恵まれているか少しは考えなさい。

いつもと違う事が起きた割には取っ組み合いのケンカ、その後ミカサが回収という全く持っていつもと同じ事が起きていた。

訓練だっていつも通りに厳しい。
いつものパターン、いつもの光景。これが幸せなのかな、と最近は思うようになっていた。
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