夢見処。

□うっかりミスにはご用心(笑)
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私は調査兵団所属のステラ。リヴァイ兵長に憧れて、というなんとも言えない理由で加入した。
が、実際兵長に会ってみると身長は私とさほど変わらないし潔癖症だし、おまけに性格が粗雑。
少々失望した、というのが正直なところだ。

にも関わらずなぜかいきなり特別調査班、通称リヴァイ班に配属されて毎日いびられている。

「おい、ステラ、茶だ」
「はい。ただいまお持ち致しました」

大体こうやって注文を出すタイミングが分かってきた気がする。
最近では、もうほとんど踏まれたり蹴られたりという躾と称した暴力はほとんど受けていない。
…しかし、今回はうっかり、本当にうっかりミスをしてしまった。
紅茶を飲む兵長の機嫌が目に見えて悪くなっていく。
そして、一言。

「……ぬるい」
「え、あぁ、う、すみませんでした!!以後気をつけますすみませんでしたふふふふふ踏まないで下さい」

私は吃音の癖でも持っているのか、というほどの見事なまでのどもり。
厨房で同期と世間話をしたのが悪かった。これはもう完全に私が悪い。

持っていたお盆を盾のようにしてなんとか距離を保とうとする。
禍々しいオーラを放つ兵長。お盆を間に挟んでも尚不機嫌なのが伝わってくる。

兎にも角にも、早くこの場から逃げたい!!という一心で「新しいものをお持ちします!!」と叫びドアノブに手をかけようとする。
が、手が届かない。
恐る恐る後ろを振り返ると左腕を完全に兵長に掴まれている。全身の血の気が引く。

「おい」
「はははははいなんでしょうか」

あ…だめだもう私死亡フラグが立ったよ…。
もっと活躍したかったなぁ…………。
しかし兵長が次に放った台詞は意外にも声音が優しかった。

「ステラ、お前もこれ飲んでみろ。そして温度を覚えろ」


お、死亡フラグ回避?…ってかそんな無茶な。

「お前に選択肢は無い。早くしろ、これ以上俺を怒らせないでくれ」


少し苛立ったような声。
うああああああぁぁぁ兵長眼がマジです。本気と書いてマジです。

「いい加減覚えてくれないと困る。自分で何事も確かめた方が早く習得できる」


しかもなんかやっぱり地味に優しい気がする怖い。
てかコレ飲んだら間接キスじゃん!!
多感なお年頃にはキツイですよこれ。
しかも毎回毎回失敗してるわけじゃないですよッ!!




…でもやはり自分の命が惜しい。
人類最強の前ではいくら私が頑張って訓練していたとしても到底敵いそうにない相手。
一瞬にして削がれること間違い無しだ。

ちびちびと飲みつつ温度を覚える。……確かにぬるい。しかも微妙に。

「覚えたか?」

コクコクと首を上下にふる。出来る限り迅速に。
もう本当首千切れるんじゃないかって思うくらい迅速に。あ、今首の筋変な音した。

「では付いて来い。俺が直々に伝授してやる」

振り返りながらこちらに視線を投げかけた後、スタスタと廊下を歩いていく。
…流し目怖いですよ、兵長。
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