平和と家
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(クソっ…)
ルッスーリアの言葉がやっぱり自分の中で引っかかっているのがわかる。
「先輩顔怖っ」
ベルがスクアーロの顔を指さして笑った。気づかぬ間に不機嫌は顔にまで出ていたらしい。
『そういうこと言っちゃだめだよ』
名前は宥めるようにベルに言う。ベルはまだ口角をあげている。
(お前のそれのせいだろうがぁ)
スクアーロはそう思ったが、何もいわずため息をつく。すると、名前が首を傾げた。
『スクアーロ?』
「…何だぁ?」
名前はどこかおかしい、そう思っていた。いつもならスクアーロが怒って、ベルと喧嘩するはずなのに、と。
『…体調悪いの?』
「大丈夫だぁ」
スクアーロはそう言うが、名前は信じきれなかったみたいで、スクアーロの額に自身の手を伸ばした。
『熱はないっぽいけど』
スクアーロの額に小さな手の平が触れた。柔らかい感触に胸が高鳴る。スクアーロは何が起きてるか、分かったときには顔が真っ赤だった。
「な、何すんだぁ!?」
『何って診てるんだよ。熱ないか』
ベルは名前の関心がスクアーロの体調に移ったことが不服なのか、さっきまで下がらなかった口角は完全に下がり、口でへの字を描いていた。
『早く寝た方いいんじゃない?』
名前はそう言って、手の平を離した。まだ残っている感触がスクアーロの身に刻まれる。
「そうだなぁ」
ベルに対する優越感が少しどころではなく得られたのは言うまでもない。ちょっとだけ機嫌がよくなったスクアーロは夕食を終え、日中残した書類を終わらせに自室へ戻った。
約三時間後。机の上の書類は何もない。ザンザスに提出し、ウイスキーを今回は何とか避けて、自室までたどり着いた。シャワーを浴び、上半身裸でタオルで髪を拭いていたときだった。
コンコン。
自室の扉からノック音。誰か確かめもせずに、入れぇ、と言った。
ガチャリ。
扉を開けるとそこには。
『スクアー、…』
真っ赤な顔で固まる名前。