平和と家
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とある日のスクアーロの自室でのこと。
「どーするの、スクちゃん」
「…」
今俺の自室にいる。ルッスーリアと一緒に。いや、ルッスーリアが押し入ってきた、と言う方が正しいだろう。
「スクちゃん、このままだとベルちゃんに持ってかれちゃうわよ?」
ルッスーリアが言うのは…
名前のこと。
ルッスーリアが言うには昨日ベルと二人でデートしたとか。昨日の異変はそれだったのか、と思ったが、それよりも心を占めたのは嫉妬だった。
「あの子、昨日顔真っ赤で行ったと思ったら、帰ってくる時にはとても幸せそうにしてたわ」
ルッスーリアの言葉が追い討ちをかける。俺だって名前の首もとに光るネックレスを見たときはちょっとショックだった。でも似合ってて、隣でベルが満足げに笑う。全くいい気はしない。
「俺にどうしろって言うんだぁ?」
俺は銀髪をわしゃわしゃと乱して頭をかいた。
「…わかってるでしょ?」
ルッスーリアはちょっとため息をつく。
「私は言ったんだから、あとはスクちゃん次第よ?」
ルッスーリアは右手を挙げて少し振る。そして俺の自室を出ていった。
たしかに最近勘づいてはいた。ベルと名前が仲良い気もしていた。もちろんむしゃくしゃだってしていた。でも、勝負に出ることは何故か出来ていなくて。
「クソがぁ…」
弱々しいそんな声が独りきりの自室に響いた。考えても考えても答えは見つからない。机の上にある大量の書類にイラつきが増した。
名前の顔が脳裏に浮かんでは消え、スクアーロの脳内を乱していく。いつの間にこんなにこの気持ちは大きくなってしまったのだろうか。
むしゃくしゃした思いはスクアーロの仕事能率を下げた。スクアーロは持っていたペンを置いて、コーヒーを淹れた。剣の手入れをしながらやはり物思いに耽る。
その日の夕食。ベルと名前は隣に座っている。ベルと笑う名前を見て、この胸に引っかかるものはもっと大きくなる。首もとで光るネックレスに心をえぐられるような気持ちになる。