平和と家
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ガタガタと何かと何かがぶつかる音がした。だいたい何で俺はここにいるんだぁ…?
「…おはよ、スクアーロ」
スクアーロの顔の脇にはマーモンがいた。
「…ここはどこだぁ?」
「ヴァリアーの医務室だよ。君が帰ってきてから約半日、ずっと寝放しだったよ」
「そうかぁ…」
何だか右手に温かさを感じた。何だろう、この温もりは。
「そういやぁ…名前はどこだ?俺の傷どうなってんだぁ?」
だんだん記憶も確かになってきた。マーモンは深くため息をついた。
「名前は行方不明だよ。スクアーロが戻った時からね。君の迎えを呼んだ部下へのメールが最後の繋がりだよ」
マーモンはそう言った。
「行方不明ぃ…?いや、あいつはきっとコズモファミリーの所にいる。二人でいたところを捕まったんだぁ」
スクアーロはマルテという剣士と戦って腹を切られたことを話した。
「やっぱりコズモファミリーなんだね。ただスクアーロ、腹の傷はないよ?」
マーモンは言った。
「ないってどういうことだぁ?」
「そのままの意味さ」
マーモンはスクアーロの衣服をめくった。確かに腹に傷なんて一つもなかった。
「…何でだぁ?確かに腹に剣を刺されたのに」
「君が刺されるなんてそうとうの相手だったらしいね」
そう言っていると医務室の扉が勢いよく開いた。
「スクちゃん!目覚めたのね!!」
ルッスーリアがいる。その隣にはフラン。ただその二人の腕はナイフをちらつかせているベルを押さえつけていた。
「お前何やってんだよ!!」
ベルはいつもと違い余裕がなさそうに言った。口はいつもの三日月型になりそうもない。ベルに怒鳴られスクアーロは驚く。
「何で名前を守ってやれねぇんだよ!」
ベルはついにフランとルッスーリアの腕をすり抜けてきた。そしてスクアーロの胸ぐらをつかむ。
「ベル、だめだ」
「ベルちゃんだめ!!」
マーモンとルッスーリアはそう言うが、全く聞く耳を持たない。
「お前のせいだよ」
ベルは冷たく言い放った。まるでナイフを当てられているようだった。
「…すまねぇ」
口からやっと出るのは謝罪の言葉。
そしてまた医務室の扉が開いた。