平和と家
□epilogo
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三年がたった。
あれからヴァリアーは特に変哲のない日々を送ってきた。
でもやっぱりアイツから電話が来たりメールが来たりすると、皆で携帯の取り合いをして、アイツと話せる時間を全員が大切にしていた。
「名前の飛行機は何時にイタリアに着くんだい?」
マーモンが尋ねてきた。
「…14時」
ベルがイライラしながら言った。現在の時刻は17時を過ぎていた。名前が乗ってくる飛行機はヴァリアー幹部専用ジェットで、普通のイタリアの飛行機よりは絶対速いし、ヴァリアー邸と空港との距離も車で30分はかからないはずだ。
「チッ」
ベルが舌打ちした。
何やってんだ、アイツ。
ベルはヴァリアー邸の門に座り込んだ。何だかんだって三時間は待ってる。一秒でも早くアイツに会いたいから。
「久しぶりに会えるんだからイライラしすぎちゃダメだよ」
マーモンの宥めるような声。子供扱いすんなっつーの。
空はもう真っ赤な世界から闇の世界に変わりつつある。
そんな時だった。
『遅れちゃってごめんねー』
背の方から声が聞こえた。
その声の主は早く会いたくて仕方なかったアイツ。
「…何してたんだよ、バカ」
ベルが立ち上がる。名前はベルに飛びついた。マーモンはやれやれと呆れながら屋敷の中に戻っていく。
『会いたかった、触れたかった』
ベルの首筋に頭を埋めて言った。
「オレも」
二人の視線が絡み合う。額どうしが触れて二人は笑う。自然と重なる唇。やっと触れ合えた。
『やっと一緒にいられるね。報告書片づけなきゃいけないけど』
愛しい笑顔。
「そんなの王子の二の次だろ?」
『ボスに怒られちゃうよ』
「知ってる」
ベルが手を差し伸べる。
「でもオレの側にいてくれるだろ?名前」
そんなことを言う目の前の王子様に私は首ったけなわけだ。
『うん』
ベルの手を取る。
「『ずっと側にいるよ(いろよ)』」
二人はこれからまた一緒に生活する屋敷に向かって歩き出した。