平和と家
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『ベル、待って…』
地球のリングで止血剤を作ろうとするが、ショックの余り、炎の細かい調節が利かない。
『ベル、ベル』
どうにか作り出してもベルが飲んでくれない。
『いやだ、いや、いや…』
首を左右に振り、飲ませようとし続ける。だがベルは動かない。まだ生きてはいる。しかしこのままではいつまでもつのだろうか。交代してルッスーリアのボックスでベルの傷を癒す。薬としてでしか治療のできない名前の技よりは効果があるようだ。
「君も愛しい人を失う辛さを感じればいい。そしたらわかるさ、僕の気持ちも!」
ウラーノが叫んだ。そこに名前はものすごい勢いで斬りかかる。あまりの速さにウラーノさえも反応できなかった。ウラーノは気づけば自分の肩から血が吹き上がっていた。
『よくもベルを…!』
名前の頬を涙が伝う。しかしその目に映るは恨みの念。復讐心に支配されていた。斬りつけられたウラーノは、それでも笑う。
「君の成長スピードもなかなかのものだね」
ウラーノは使い物にならなくなった右手から剣の持ち手を左手にした。
「名前、待てぇ!」
スクアーロが叫ぶが、名前は聞く耳を持たない。だがそこでスクアーロが間に入ればヘタすれば命を落とす可能性がある。その時真っ先に動いたのはザンザスだった。
「名前、やめろ」
ザンザスの大きな手が名前の細い腕を掴んだ。ザンザスの力には名前も勝てない。振り解こうとしてもそう簡単にはいかなかった。
「復讐心に捕らわれるな」
ザンザスの紅い目が真っ直ぐに名前の目と合う。名前はその体温と強い何とも言えぬ力に心を落ち着かせた。
「冷静に戦え」
ザンザスの言葉に頷く。
「グローボ、生き返らせよう。そして最強のコズモファミリーが彼女を守ればもう何も彼女を傷つけるものはない」
ウラーノが貘に向かって言った。
「プリンス・ザ・リッパーの記憶を食い尽くしてこい!」