黒子short
□夢幻の夜
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何で、私をおいていったの?
声にならない叫びは涙になって、シーツに染み込む。目の前にはもう私の前からいなくなってしまった和成の笑っている写真があった。もう笑いかけることもない彼を想って泣くしかできなかった。
交通事故だった。和成のところに突っ込んできた車の運転手を見たとき、つかみかかって、首を絞めて、殺してしまおうと思った。
何で、和成を…。
お前が死ねばいいのに。
毎日、泣いて、泣いて、もう死にたかった。死んでしまった方がいっそ楽だと思った。そんな日の夜だった。
ここ最近泣き疲れて寝ることばかりの私のもとに和成が帰ってきたのだった。
「よ、ライ。何泣いてんだよ」
自分の目が信じられなくて。でも目の前にいるのは紛れもない和成で。
『か、和成なの…?』
和成はニッと笑った。
「俺はライの大好きな高尾和成ですよー」
いつもと変わらない様子の和成。私は和成に飛びついた。ちゃんと筋肉がある和成は私のことを難なくキャッチして、そのまま抱き締めてくれた。
そうだ。この温かさ。この匂い。
声も身長も全部和成だ。
私が大好きで大好きでたまらない和成だ。
和成は涙を流す私の頭をいつもみたいに撫でてくれて、ぎゅっとしてくれて。
夢なのかもしれない。
でも夢でもいいんだ。
和成がいるなら何でもいいの。
私が落ち着いた頃、和成が口を開く。
「なぁ、ライ?お前さ、俺が死んでから毎日泣いてるっしょ?」
『当たり前だよ…。和成だもん』
そう言えば、和成はちょっと笑った。
「俺愛されてるー」
『愛してるもん』
「…俺もライを愛してるよ」
和成の唇が私の額に触れた。
私は和成の胸に預けていた頭を上げる。
「…俺嬉しいよ。ライがこんなに俺のこと愛してくれんの。ただ、そろそろ泣くのはやめにしよーぜ」
和成が言った。
「俺はライの笑顔が見たい」
『…なら、私だっていつでも和成を見たい。和成と一緒にいたい。和成に私の一生あげるから』
だから、傍にいさせて。
そう続けようとした唇は和成に塞がれた。
「超嬉しい。でも、俺じゃもう隣にいてやれねーから、『なら私も死ぬよ。和成のいない世界なら意味ない』
和成は困ったように笑う。
「俺もお前と一緒にいてーけど、でもお前はまだこっち来ないでいて」