黒子short
□甘い誕生日
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教室で一人彼の迎えを待つ。秋もだんだん深まってきた今日この頃。今日は私の彼氏の敦の誕生日だ。朝から鞄に入ったままのプレゼントとケーキ…は作れなかったけど代わりのクッキーはラッピングされたまま。
明日提出の課題のやる気も出ないし、ボーッとして過ごす。
今頃また疲れたとか言いながら練習してんだろうなー。そう思えば、机に突っ伏す。
敦まだかなーって彼を待つこの時間はかなり好き。敦のことばかり考えられるし、のんびりと流れる時間を体感出来るのが好きだ。敦の回りは基本的にゆっくり時間が流れる。そんな雰囲気がとても好きだ。
そうやって考えたら、ほら。
「ライちん〜お待たせ〜」
まいう棒を片手に私を迎えに来てくれる。
『敦!』
私は敦の方に鞄を持ってすぐに飛びつく。私よりもずっとずーっと大きい敦はそんな私を軽々受け止めてくれた。
「ごめんねー、待たせて」
敦の声が頭上から聞こえた。
ううん、と首を左右に振れば、敦は私の頭を撫でた。そして髪をすくように触る。
私がそうやって触られるのが好きなのをわかってるから。
「帰ろ〜」
ぽんぽんと頭を撫でて敦が言う。私も大きく頷いて、敦から離れた。
二人横に並ぶ。敦の大きな手が私の手をとらえた。私もその手を握り返す。そして昇降口まで歩いた。
敦は寮だけど、私は家から通ってるので敦が私を家まで送ってくれる。
『今日の練習はどうだったの?』
「ん〜?疲れたよ〜。雅子ちんのメニューも赤ちんほどじゃないけど辛いし」
そう言った敦の目の前に、私は一つ目の紙袋を差し出した。
『じゃ〜ん!そんな練習頑張った敦には私が作ったクッキーをあげよう!』
敦は最初は目をぱっちりと開けて、一度瞬きをした。でも次の瞬間には笑顔だった。
「やった〜」
敦が紙袋を受け取り開ける。そして手に持っていた市販のお菓子はエナメルに入れて、クッキーを食べ出した。
『敦誕生日おめでとう』
「うん。ありがとうライちん」
美味い、と敦は私のクッキーを食べてくれた。私はちょっと照れ臭くて笑った。