黒子short
□Severe and Gentle
2ページ/4ページ
そして他のスタメンのメンバーも着替え終わったようで、シューティングを始める。青峰君と黄瀬君は懲りずに1on1をしてる。
私はこの時間が好きだ。さつきや私がゴール下に待機して、皆が撃ったシュートのリバウンドをとってあげる。名前を呼んでパスして、受け取ってくれたときは自分もプレイヤーのような気持ちになれる。
「ムッ君!」
さつきが紫原君にパスする声が聞こえた。さつきがいるゴールには紫原君と緑間君がシュートしていて、私は赤司君のリバウンドをとっていた。でもスタメンのシューティングのリバウンドは正直言えば楽だ。入る確率の方が明らかに高いし、弾いたときだって撃った人の方がどこに落ちるかわかるから既に落ちる場所に皆いるのだ。
『赤司君!』
ミートしてうつその美しい流れは何度見ても見飽きなくて、いつも結局帰るのは夕方になるのだ。
日が傾き、空を赤く染めた頃。キセキの世代の5人と黒子君とさつきと私で帰った。
「じゃあねー!テツ君また明日ー!」
さつきが黒子君にアプローチしながらお別れする。
そんなさつきを見て、青峰君がため息をつきじゃあな、とお別れした。
そして次は緑間君が帰っていき、紫原君も帰る。次は私。
『じゃ、お疲れ様でした』
そう言ったら、赤司君が私の後ろを着いてきた。
『赤司君?』
「送る」
そう言った赤司君は私の腕を掴み歩き出した。黄瀬君と黒子君が手を振るので手を振り返した。
赤司君の手は私の腕を放してそのまま私の手を握った。
『あ、赤司君!?』
私は気が動転する。常に憧れ、傍にいたいと思っている人にこんなことをされたら平静ではいられない。
「何か文句でもあるのか?」
赤司君の命令は絶対だ。逆らうなんてもってのほか。
『…ないです』
ただ私の方がいっぱいいっぱいになる。温かい手はいつもの厳しさなんて感じさせないほど優しくて。
顔を真っ赤にして帰路を二人で歩いた。
でも、どうして今日に限って赤司君は送ってくれるのだろうか。
いつもはさっきの場所で黄瀬君や黒子君と一緒にバイバイするのに。