黒子short
□Severe and Gentle
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汗で濡れた床に凄まじい熱気。大きな声がコートの外からも中からも聞こえてくる。
「テツヤ、これくらいでへばるな」
赤司君の声がした。その視線の先には黒子君がかなりの汗を流して体育館に倒れていた。
『黒子君!』
あわてて近くに寄り、熱中症用の濃いめのスポーツドリンクを飲ませる。その後にただの水を飲ませ、氷嚢を脇の下や首もとに当てる。
黒子君だけじゃない。この暑さの中の走り込みメニューは相当キツかった。この体育館にいるのは一軍のメンバーだから抜ける人はそんなに多くないが、二軍、三軍も相当の走り込みだし熱中症になる人は後を絶たなかった。
そんな超鬼畜メニューを考え出したのが、このチームのキャプテン、赤司征十郎だ。
「3メン5往復3セットいくぞ」
声をかけた赤司君と共に先頭の青峰君と紫原君がスタートした。
マネージャーでもこんなに暑くて辛いのだ。皆の顔がやつれていく。でもスタメンは基本弱音を吐くことはなかった。
「終わった〜!」
黄瀬君が挨拶を終えて体育館から飛び出した。
暑ささえもトレーニングにしようと窓も扉も閉め切ってやっていた体育館だ。きっと皆こもって暑いこの建物から出たくて仕方ないに違いない。
さつきと私でキンキンに冷えたドリンクを出せば、我先にと皆が群がってきた。
「紫原退くのだよ!でかくて邪魔なのだよ!」
緑間君の声が聞こえた。
「あ〜生き返るッス〜」
黄瀬君がドリンクを飲んで言った。
皆が練習が終わったことややっと涼めることに対して嬉しがる最中、赤司君は一人シューティングをしていた。あんなメニューをした後なのに、そのシュートは吸い込まれるように入る。滑らかなジャンプシュートの動きに食い入るように目が離せなくなった。
皆がだいたい飲み終わった後、空になったボトルに再び冷たいドリンクを作る。そして赤司君のタオルを持った。
『あ、赤司君!ドリンクとタオル置いとくね』
赤司君はフリースローをうっていた。
「悪いなライ。ありがとう」
そう言いながら放ったシュートは綺麗な放物線を描きネットの音を響かせる。入ったボールは赤司君の元にまた返ってくる。