黒子short
□笑って
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『はぁ、はぁ』
ダッシュで階段を上がる。バスケで鍛えてたからってこのダッシュは辛い。
ガチャ。
ドアノブを回してドアを開ければ目の前には真っ青な世界が広がっていた。快晴の青空が私を迎えてくれる。私はそのまま周りをきょろきょろ探した。一体どこ行ったんだアイツは!?
その時頭上から声がかかった。
「何探してんだよ、ライ」
その声はまぎれもない探してたアイツの声。
『大輝…部活始まるよ』
彼がいる屋上の高いとこに上った。
「…知ってる。わかってんだろ、お前だって」
何をわかってるのかまでを大輝は言わなかった。それを言うまでもないからだ。私だってそう、わかってる。
「また上手くなってどうすんだよ」
ただまた笑ってバスケしてる大輝が見たいんだ。
『さつき怒っちゃうよ?』
私がそう言うと、大輝は特に気にした様子もなく、別にいいと言った。
いつから笑ってバスケしなくなったんだろう。
私だってバスケをしてきた。
でもいつだって大輝から一本もとれたことはなかった。
『さつきにメール送らなきゃ…』
「やめろよ、場所バレんだろ」
大輝が携帯を取り上げる。
『ちょっと返してよ』
「無理。俺は行く気なんかねーし」
大輝のポケットに私の携帯は仕舞われた。
『返して』
大輝の方に手を伸ばせば、その手を強く引かれた。背に回る男らしい腕に大好きな匂い。大輝に抱き締められてることを理解するには十分だった。
「お前も一緒にいろよ」
きっと大輝は確信犯だと思う。私がこうされれば大輝に逆らわないことをわかってる。肯定の意を込めて大輝の背に腕を回せば頭を優しく撫でてきた。
あー。悔しいけどやっぱり大好きだ。
『…アホ峰』
「何だよ。てか名前で呼べって」
大輝からでこぴんをくらい、顔を上げた。
『きっとそろそろ大輝より上手い人が出てくるよ、バスケ』
そう言ったら、ニヒルに大輝は笑う。
「楽しみだな、そいつがでてくんの」
いつかまた、バスケして楽しそうに笑う大輝を見たいんだ。