中編
□5 まるで、
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名前が怪我をして、目を覚ましてから3日が経過した。名前はとっくに医務室から退院して久しぶりのまとまった休暇を楽しんでいた。
「ごめんね〜?もしかしたらほかの皆もそうかもしれないから何かあったら気をつけなさいよ?」
携帯から聞こえるのはルッスーリアの声。任務から帰るのが遅くなってしまうとのこと。何故なら外は大雪だからだ。三月に入ったにも関わらず、イタリアの冬将軍は最後の力を振り絞り猛威を奮ってきた。今屋敷内にいる幹部は名前ただ一人だけ。ボスもスクアーロも他の皆も今日はたまたま任務が重なってしまっていた。
今は夜の八時頃。がたがたと風が窓を揺らし、雪がしんしんと降っていた。暖炉の前のソファを独占中だが、人がいないせいかいつもより少し寒く感じた。
するとまた携帯が鳴った。着信を見ると、フラン。フランはベルとレヴィと任務だった。
『もしもし?』
「あ、名前先輩ー。すみません、今日は帰れそうにないですー。天候でジェットが飛ばせないらしいんでー」
『うん、わかった』
「他の人はいるんですかー?」
『ううん。まだ。でもルッスーリアも今日中は辛いって言ってた』
「…すみませーん。ミーも本当は変態雷親父や堕王子じゃなくて先輩といた方が嬉しいんですけどー…いだっ」
「ふざけんな、カエル。王子だって名前といた方いーし」
「なぬっ、俺だって「キモいんだよムッツリ」
フランの声の向こうでは、ベルとレヴィの間で戦闘が起きているらしかった。相変わらずの様子に名前はただ笑った。
『とりあえず気をつけて帰ってきてね』
「はいー。じゃ名前先輩もお気をつけてー」
フランとの電話を切る。名前はふーっとため息をついて、伸びをした。寒いので使用人に暖かいココアを頼んだ。
すると、また携帯が鳴った。今度はスクアーロからだった。
『もしもし?』
「俺だぁ。誰か帰ったかぁ?」
『誰も帰って来てないよ。スクアーロが帰って来なかったら誰も今日中には着かないってさ』
ボスは元々明日帰ってくる予定だった。