中編
□5 まるで、
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「そうかぁ。俺は後30分てとこだなぁ」
とりあえずスクアーロは帰ってくるらしい。あ、今夜スクアーロと二人だ、なんて思った。
『了解』
「あと腹減ったから頼むぜぇ」
『何食べたいの?』
「とりあえずあったけぇのがいい。寒ぃからなぁ」
スクアーロがそう言った。
『わかった。食べるのはシャワー浴びてから?』
「そうだなぁ」
『わかったよ。じゃ気をつけてね』
「お、おう」
名前はまた電話を切った。最後のスクアーロのどもりに少し笑った。スクアーロのご飯。使用人に頼んだ方が楽だが、名前は自分で作った方が面白そうだと思ったので、自らキッチンに立った。あと30分で到着し、シャワーを浴びてからとなると約一時間後に完成すると程よい。名前はパスタを作ろうと思い、ソースを作り始めた。元々料理には自信がある。昔はよく自分で作って食べていた。名前はボウルに食材を入れて、混ぜたりした。
スクアーロがヴァリアー邸に到着した。少し血の臭いがする体を洗うため、自室に戻った。
そしてシャワーを浴びながら、ふと気づいた。
(な゛っ…まさか…今日は名前と二人きりじゃねぇかぁ!!!)
喜びと緊張がぐっと増した。シャワーの蛇口を捻り、濡れた髪をタオルでガシガシと拭いた。
髪を乾かした後、スクアーロは談話室に向かった。帰る時連絡も入れたことだし、名前はここにいると思っていたのだ。だが実際は。
「…?自室かぁ?」
談話室のどこにもいなかった。とりあえず名前の自室に行こうと思ったときだった。
『あ、スクアーロ。おかえり』
エプロン姿でパスタを持ち、ワインを片手に名前が現れた。
「おぉ、」
感嘆の声なのか、返事として出した音なのか、自分でもよくわからない声が出た。
『私がパスタを作ったんだ。ワイン、付き合ってよ』
自然に笑いかけてきた名前に心臓が暴れ出す。スクアーロはとりあえず談話室に入り、ソファに腰掛けた。