中編

□1 背中合わせ
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9代目直属暗殺部隊ヴァリアー。裏社会に生きる者ならばその組織を知らないはずがない、それほど有名なところ。そこで起きた小さな恋の話である。















「う゛お゛ぉぉぉい!!!名前まだかぁ!?」

スクアーロが名前の自室のドアを思い切りよく開けた。

『今終わったとこだよ。ていうかノック位してもらえない?着替えてたらどうするの?』

名前がそう言い放つとスクアーロはちょっと恥ずかしくなり、談話室で待ってると言い、赤い顔で出て行った。

名前とスクアーロはヴァリアーのツートップ。ザンザスというボスを除けば、だが。二人共剣術を使い、技術の高さも動きのキレもほぼ一緒。二人の勝負は何とかスクアーロが50勝49敗と勝ち越している状態だった。だがその二人は互いを想い好意を寄せていた。鋭い名前はそれに気づいていたし、周りの幹部にも感づかれていたが、その一歩を踏み出すことは決してなかった。ただ苦しいのは両想いだと知らないスクアーロだけだった。


談話室に行くとそこにはベルやフラン、ルッスーリアがいた。

「う゛お゛ぉぉい、遅ぇぞぉ」

スクアーロがニヒルに笑った。

『悪かったね』

スクアーロが立ち上がったが名前はソファに沈んだ。

『もう少ししてからにしようよ』

「な゛っ、だめだぁ!!!俺がどんだけ待ったと思ってんだぁ!」

『仕方ないじゃないか。任務だもの』

今から二人がやろうとしていること、それはついに100回目となるガチンコ勝負。スクアーロがやりたいと言った日の次の日に名前は二週間のちょっと長めの任務が入っていたので、それを理由にこの勝負を先送りにしていたのだ。

「ま、少しくらい休ませてやれよ、先輩」

ベルがししし、と笑った。名前はやはり動く気がないようで、使用人にアップルティーを頼んでいた。スクアーロはがしがしと頭をかいてソファに再び座った。

『それにまたなかなか決着が付かなくて夕方とかになっちゃうんだからさ』

スクアーロの隣で名前は広いスクアーロの背中をポンポンたたいた。
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