シリウスに手を伸ばして

□さようなら
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『青峰のは、断ったんだ。征十郎と敦はちょっと遠すぎるなと思うし。真ちゃんに誘われた秀徳にでも行こうかな』

「何で緑間っちなんスか?…俺と一緒に来てよ」

涼太の方を見れば、こっちを横目に見ていた。

『海常?』

「そうっスよ。俺はライが辛い時支えてあげられる。バスケ部に無理に入れなんて言うつもりもないっス。まぁできたら入って欲しいけど」

俺と一緒においでよ。そう言ってくれる涼太は、いつもと変わらないでいてくれる。昔から、何も変わらないでいてくれる。

『涼太…』

「なんスか」

『海常…行こうかな』

その目は涙の膜が張っていて、少しキラキラしていた。黄瀬にはその表情すら苦しかった。

「来て」

そういう涼太に私は笑いかけた。

『うん、決めた。私海常に行くよ』

そうこなくっちゃっス!涼太は嬉しそうに笑っていた。

もう、私が信じれるのは涼太しかいないようなそんな気がしてしまっていたのだった。









『あ、木吉さん。今日もお疲れ様です』

最近入った新しい患者さんと知り合いになった。私と同じように膝を痛めている。

「おう!元気そうだな!」

爽やかに笑うその人は誠凛と呼ばれる高校に通ってるとか。

『私学校やっと決めたんですよ』

「ほーう!よかったじゃないか!バスケはどうすんだ?」

ライの表情は曇る。木吉は察する。

『プレーヤーとしてじゃなくてマネージャーとしてチームに属そうかと思ってます。幼なじみがそこに入るので』

「そうか!男バスか?」

『そうです』

「ならいつかやりあう日が来るの、楽しみだな」

彼の笑顔は私まで笑顔にさせる不思議な力を持っているような気がした。

『そうですね。その時は手加減しませんよ!』

「のぞむところだ!」













あっという間に、春は来た。卒業証書を受け取り、いろんな人と写真を撮って。辛いことも楽しいことも色々あったこの学校ともお別れだ。


そして、あの人とも。


「…黄瀬のとこに行くらしいな」

『うん』

後ろから話しかけられても誰だかなんてすぐにわかる。

「じゃあな」

『うん』

振り向けなかった。


こんなに泣いてる姿、君に見せられるわけないでしょう?

もう泣いても君は支えてくれない。

君は私の涙を拭ってくれない。

大好きだった。

離れてしまった理由はわからないけど、私も話しかけられなくなった。

青峰の相手ができなくなってしまったのが、心底申し訳なかったから。

君を孤独にやることだけはしたくなかったのに、何もできなかった。

どうしてこうなってしまったんだろう。

後悔ばかりで君に何もできなかった自分が私は一番嫌いになった。

ごめんね。ばいばい。



桜が舞う。小さな声で言ったその言葉はきっと君まで届かない。




君の光は明るすぎた。


手を伸ばしても、もう届かなくなってしまった。


私の光は、消えた。













シリウス<中学生編>完
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