シリウスに手を伸ばして
□距離
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青峰はそれから部活に来なくなった。青峰だけじゃない。来たくないなら来なくてもいい。そんなスタイルになったのだ。青峰が飛び出したあの日、何かが変わってしまった。でもその原因は青峰のせいだというわけでもなさそうであった。
私も仲の良かった人がいない日が増えて、なんだかやる気を失ってしまった。女バスにいれば、そんなことはないのだが、男バスの空気は何だか変わってしまった。
『ねぇ真ちゃん』
「何なのだよ」
『私たち、もう前みたいには戻れないのかな』
いつもいるのは真ちゃんや征十郎なので、そことはよく話すのだが、何だか征十郎とは話しづらくなった。征十郎もどこがと明らかに言うことは出来ないが、それでも何か変わった。
真ちゃんは息を吐いた。
「来ないやつはそれで下手になるだけだ。俺たちとの差ができるだけだ」
そう言って放たれたシュートは綺麗なループでネットをくぐる。
綺麗なシュートだと思う。他のみんなも上手くなったはずなのに何か前とは違う。何か足りない。何かなんてわかりきってるけど、誰も何も言い出せないのだ。
『今日はもう上がるよ。お疲れ様真ちゃん』
「ああ。身体を冷やすなよ」
『うん。ありがとう』
真ちゃんに背を向けた。ライは1人部室へと足を進めた。