シリウスに手を伸ばして
□距離
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それから二人の距離はあいてしまった。無事全中連覇を決めて、三年生が引退して。あっという間に夏が終わった。
1on1しよっか。そう声をかければ、お前とやったらさらに他の下手なやつと差が開くだけだからやらねぇなんて言われた。
青峰は部活にはどうにか来ていた。でも、どれもイライラしているようにしか見えなくて。でもライには何もできなかった。
そんなある日。私は女バスの練習に出ていた。そして、練習後に体育館にいけば、そこに青峰とテツの姿はなかった。
『りょ、涼太?今日青峰とテツ休みなの?』
「いや、青峰っちキレて出ていっちゃって黒子っちが追いかけてくれてるんスけど恐らくダメだったんだと思うっス」
もう、きっと。何も青峰の絶望を止められない。
「しかも練習にでなくても青峰っち使うとか監督言いはじめて意味わかんないっス」
そんなことを。
それが青峰の耳に入ってしまっているならば、もう青峰は練習には来ないだろう。
私と1on1すらしてくれなくなったのだから。
私は全中が終わってから、青峰と一緒にいた時間のほとんどはバスケしてたんだなってことに気づかされていた。バスケと距離をおいた青峰と関わる時間は以前に比べ、圧倒的に減っていた。
『私青峰探してくる』
「は!?外雨っスよ!?」
『折り畳みあるし。このままでいいわけないでしょ』
下ろしたエナメルを再び肩にかけて、ライは体育館をあとにした。
どこにいるかなんて見当もつかない。それでも探し出して青峰と話さなければならない。どうしてもそうしないと、青峰は手遅れになってしまう。
白い靴下は汚れて、あちこちを走り回って探す。そして数十分後、ライはやっと青峰を見つけたのだった。
『青峰!』
土手を青峰は一人歩いていた。雨に打たれて。青峰の目は少し赤くなっていて。何もないみたいに空虚な目をしていた。
「ライ…」
青峰の手をとれば、雨で冷えきって冷たくなっていた。
『…バスケするの、辛いんだよね』
わかるから。私しかわかってあげられないから。
『バスケって一人でするものじゃないもんね』
青峰を傘の中に入れる。鞄からタオルを出して拭いてあげる。とても冷たかった。
『…無理なんてしなくていいよ。やりたいようにやればいい』
青峰の背に腕をまわせば、何も言わなかった青峰が口を開いた。
「…もうテツのパスの取り方すら忘れちまった…」
胸の奥がギュっと苦しくなった。青峰とテツは言わば相棒という関係だったのに。それが青峰にとって、テツにとってどれだけ悲しいことか。辛いことか。