シリウスに手を伸ばして
□見つからない
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決勝トーナメント一回戦。
「俺の欲しいもんは絶対見つかんねー」
「俺に勝てるのは俺だけだ」
ライの手からボールが落ちる。
数年前の自分を見ているようだった。ついてこないディフェンス。圧倒的な差に顔が下がりっぱなしの相手チーム。そして、あの青峰の顔。
まずい。
「ライ!?」
『ごめん!ちょっといってくる!試合までにはちゃんと戻るから!』
コートについた時、青峰のプレーは、私が知る青峰のプレーではなくなっていた。危なっかしいのになぜか入る。そんなプレースタイル。
どうして、どうして。
なんで青峰がこんな苦しい思いをしなきゃいけないの。
下唇をかんで、涙が流れないよう耐える。
ねぇ、お願いだからそんな悲しそうにプレーしないで。
ライには、わかっていた。投げやりに見えても、無表情であっても、今青峰が感じているのは悲しさであり、寂しさであることを。
試合が終わったとき、青峰のもとに駆け寄った。
『青峰、「…結構クるよな」
青峰は悲しそうに笑ってみせた。
「こっちがちょっと真面目にやれば、相手は何もしなくなる。俺もうよくわかんねぇわ」
元気出して?わかるよ、その気持ち?あとで1ON1しよう?結局なんて声をかけたらいいかわからなかった。
「お前この後試合だろ?ほら、行けよ」
青峰はそう言って、通り過ぎて行った。
何も言ってあげられなかった。そしてそのあとに続くのは、ショックを受けているテツ。
「あ、ライさん。試合頑張ってください」
違う。違うんだ、みんな私のことなんか気を遣わなくていい。みんな悲しい顔をしてる。それなのにどうしてそんなことしか言わないの?もっと悲しいって叫んでいいのに…
「ライ、3分前だ。行って来い」
征十郎に言われて、気づく。私は思わずうつむいた。
何も声をかけられない。傷ついたのは私じゃなくてみんななのに。私はその気持ちを分かってあげられるのに、何も言ってあげられなかった。
照明がきれいに床に当たって撥ね返っている。
どうしようもなく、無力な自分に腹を立てながら、私はTシャツを脱ぎ、ユニフォームになった。