シリウスに手を伸ばして
□ずっと続けばいい
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『大丈夫だよ』
ライはそう言って、青峰の背中をポンポンと撫でた。
「…ありがとな」
青峰はそういって、私の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。誰のために朝早く起きてセットしたと思ってんだ!っていつもなら思ってしまうんだろうけど、青峰の悲しそうな笑顔を見ては、そんなこと言えない。
…いつしか、私では役不足になってしまうのだろうか。
もしそうなら、それまでに青峰を楽しませてくれる人が現れますように。
そんな気弱なお願いをせずにはいられなくする顔をしていた。
家に近づくと、青峰がプレゼントを出した。
『え!これ今日のペンギン!』
ペンギンのぬいぐるみだった。
『さては買ってなかったな。プレゼント』
「いや、買えなかったんだっつの。お前に物あげたりしてるし結構ネタが尽きてきただけだ」
『それ素直に言うのもなかなかだと思うけど』
ふと笑みがこぼれる。
『ありがとう』
離れた手を再びつなぎ直す。
こうやって他愛のない話をしている間は、青峰の影に忍び寄る不安から目を背けられて。青峰も変わらない笑顔で。
どうか何も壊れないでいてくれますように。
どうかみんなと楽しく過ごす時間だけでありますように。
どうか青峰とずっと一緒にいられますように。
らしくもない願い。君の隣にずっといたいなんて。でもそうなの。青峰と一緒にいたいの。
こんな淡いお願い、口にすることなんてできなくて。
「じゃあな」
『うん。気を付けて帰ってね』
また明日。そんないつも通りのお別れ。
小さくなる青峰の背中。見えなくなるまで眺めて。
もしかしたら、予感してたのかもしれないね。
もう、崩壊まで、時間がないってことを。