シリウスに手を伸ばして
□すき
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俺が教室から飛び出し、走っているとしばらく先に見慣れた姿。ライとテツが並んで歩いていた。俺は後ろから声をかけた。
「ライ!!」
テツとライが振り返る。俺はライの二の腕をつかんで歩いた。
「ちょっと来い」
『え?』
ライは少し困った顔をしていて。
「ちょっとだけだ」
俺がそういうと、テツが先行ってますね、と言って俺ら二人に背を向けた。そのまま俺は、近くの空き教室にライを連れ出した。
『…急に何なの?』
ライが言った。
「話がしてぇ」
俺は手を離して机に腰かけた。
「何で俺を避けてる?俺が傷つけたなら謝る」
ライは困ったように視線をそらした。やっぱり俺か。
「黄瀬にも言ってねーんだろ。お前が溜め込むタイプなのはもうわかってるから言えよ」
ライはそれでも口を開かない。俺は困ったように頭をかいた。
言えと言われたって、言えるわけがない。理由を話すためには必ず私が青峰に寄せる想いに触れなければならない。私は青峰を困らせたくないんだ。
「そんなに言えねーことなのか」
青峰が言った。私は頷いた。すると、ふわっと体が傾いて、背に青峰の腕が回る。目の前には黒い肌。また、ここに帰ってきてしまった。
「もう勝手に離れんなつったろ」
ああ、そんなことされたら。またもっと好きになってしまうというのに。
私の目から涙がこぼれて。青峰の青いシャツに染みをつくる。
『…好きな人いるなら、そんな優しくしないでよ…っ』
青峰のブレザーを掴んで言った。青峰が少しビクッとした。やっぱり好きな人はいるんじゃないか。
『好きな子にこんなとこ見られたらどうすんの?変な誤解されても私はどうにもできないし、』
こう言ってしまうのは、私が変な誤解をしてしまうからなのかもしれない。
『もうわかんない』
私がそういうと、青峰の腕の力が弱まる。そして青峰に泣き顔を見られ、涙を指で掬われる。