シリウスに手を伸ばして
□近くて遠い
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征十郎にそう言えば、征十郎は困ったように笑っていた。
そんなとき。
「青峰ーっち。ちょっといいスか?」
黄瀬が青峰を呼んだ。
「おう」
青峰はそのまま黄瀬の後ろについていった。しばらくすると、青峰に背を向けていた黄瀬が振り返った。
「最近、ライがあんま元気ないんスよ」
黄瀬の視線は青峰の腹あたりをとらえる。いつもより下に下がる視線。
「あーそれは俺も思ってた」
それは青峰の本心だった。でも、あの日の帰り道からライが元気がなくなったのはわかっていた。謝りながら悲しそうに笑うアイツの顔が焼き付いて離れない。
「俺が何回聞いても何でもないの一点張りで何もいってくれないんスよ」
青峰は自分が何を聞かれるかわかっていた。
「俺は知らねーよ」
黄瀬がびっくりしたような顔をした。
「アイツから話を聞いた訳じゃねーけど俺も知らねー」
そう言ったが、黄瀬はいまいちその答えには納得出来なかったようだ。
「青峰っちに言えないわけがあるからライは青峰っちに言わないって訳じゃないっスよね?」
黄瀬の言葉は無遠慮に青峰の心に踏み入った。
俺だって、それが怖いんだよ。俺が話したあとだったから。アイツが悲しそうな顔したの。
そんな顔すんなって言う前に、ライは俺の隣からいなくなって、黄瀬の隣で手を振っていた。あの時だって別に呼んでそれを伝えられないわけではなかった。ただ、俺がライを呼ばなかっただけだ。