シリウスに手を伸ばして
□近くて遠い
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私はあの日、家に帰って泣いた。誰にも言えなかった。こんなに辛いなんて思わなかった。青峰の隣にいれなくなることが怖くて仕方ない。
次の日。私はいつもと変わらないかのように接した。でも不思議と距離を感じる。一緒に1on1だってするし、話したりもするし、並んで帰ることだってした。今までと変わらないはずなのに、何でか青峰が遠い。青峰もあれから何も言わなかった。本当にいつもと変わらない日常。
「ライ、1on1すっぞ」
『うん』
何でだろう。
遠い。
側にいるのに、私じゃない誰かをその濃青色の目で見てることに嫌だと思って。今までの二人でいた時間を思い出すと胸の奥がとんでもなく苦しくなる。私が生きてきた中で青峰といたのなんて、まだたった半年位なのに。こんなに執着するなんて。
人に踊らされるのは好きじゃない。でもこればかりは私も無理。側にいたい。青峰と一緒にいたい。
この人だけに愛されないと意味がない。
そう思うほどの愛は重いものだと思ってきた。でも、今はわかる。青峰じゃないとダメなんだ。私を見てくれる人がいても私が見てるのは青峰で、好きなのも青峰なのだから。
「よっしゃ!」
私のドライブは青峰にブロックされた。征十郎が眉をひそめている。そんな怖い顔しないでよね。
休憩中、征十郎が私を呼んだ。
「最近調子悪いだろう?」
『…気のせいじゃない?』
正直プレーにまで出てるとは思わなかった。
「特に青峰とやるときだ」
『…気のせいだって』
これは私が悪いから。青峰が誰かを好きなことは悪いことじゃない。ただ、それを乗り越えられない私が悪い。
「言いたくないなら別にいい。ただそんな悲しそうな顔をされれば気にもなる」
征十郎はそう言って、私の眉間に触れた。どうやら知らぬ間に眉間にシワが寄ってしまっていたらしい。
『…ありがと』