シリウスに手を伸ばして
□二人きり
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『青峰…?』
「お前魘されてたぞ。怖い夢でも見たのか?」
少し焦った様子の青峰。
『うん。…ちょっとね』
今目の前に青峰がいることに安心した。あんな暗闇、もういたくない。怖い。服に涙が落ちたとき、私が泣いていることに気づいた。
「どんな夢見た?」
青峰が言った。
『…皆がいない夢。青峰も涼太も征十郎も…みんなみんな、いない夢』
青峰が私の背に腕を回した。
「俺はちゃんといるじゃねぇか。お前の隣にちゃんといる」
シトラスじゃない、青峰の匂いがした。何でこう、私が欲しい言葉をすぐに見破れるんだろうね。私は青峰に小さくしがみついた。いつも一緒にプレーしてるときは気にしないようにしてるこの体格差に安心する。
「誰もお前を追いていったりしねぇよ。だからもう…」
そんな不安な顔すんな。
バカみたいにまっすぐな言葉。私はその言葉に何度も救われてきた。
ああもうどうして。
こんなに好きなんだろう。
『ありがとう』
青峰はいつだって私に光をくれる。
青峰は独り高みにいた私に
光をくれた唯一の人だ。
欲張りかもしれないけど、
青峰にしか言えない言葉があるの。
『側にいてよ…』
「…おう」
大好きなんだよ。
しばらくして落ち着いた私は、青峰に秘密を打ち明けようと思った。私があんな夢を見るのは今日が初めてじゃなかったのだ。
『…私の本当の父さん、死んでるんだ』
青峰になら、話したいと思った。私が、聞いて欲しかっただけ。まだ涼太とお母さんしか知らない事実だった。
私がまだ幼いときのことだった。父さんが亡くなったのは。いつも近所の公園で私にバスケを教えてくれた。今の私があるのは父さんのおかげだと思う。父さんがいなければこんなにバスケを好きにならなかったろうと思う。たくさんのことを教えてくれた。でも、ある日交通事故で父さんは帰らぬ人になってしまったのだ。
私と母さんは悲しみに暮れた。ずっとずっと悲しかった。