シリウスに手を伸ばして

□二人きり
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私は眠くなってきて、欠伸をした。何着ようとかどうしようとか何だかんだやっている間に寝るのが遅くなり、寝不足だった。ましてやあの強烈な合宿のあと。
寝不足がまず私らしくないな、と思った。体調管理にも手を抜くことは基本的にないつもりだからだ。

「やべ、俺も眠くなってきた」

青峰も大きく欠伸をした。そして私の肩に腕を回した。青峰に自然と近くなる。

『な、え、青峰…?』

「寝ちまうか。互いに寝みーんだし」

青峰は目を閉じた。整った顔だなぁなんて思ったりもするが、それどころではない。

『え、青峰?』

本気でこの一瞬で青峰は眠ってしまっていた。そんなに疲れてるならアロマキャンドルなんていつだって付き合ってあげるからしっかり休めばよかったのに。私は隣ですやすや眠る青峰の肩に回す腕を外した。このままじゃこっちは寝れたもんじゃないからね。

実際触れてみると、青峰と自分の手の大きさの違いに驚く。まぁ黒いのはいつものことだけど。筋が通る腕に骨ばった手指。

いつもこの人とバスケして、笑って。私はこの人が好きなんだなぁって思ったら何だか嬉しいような不思議な気持ちになった。

このくらいは許してほしいな、なんて思った。

私の肩に回された腕を自分と青峰の身体の間に置く。私はその大きな手を握った。握ったっていうよりは私の手の方が包み込まれてるんだけど。青峰が少し笑っているような気がした。

私は青峰の肩に頭を倒す。そしてそのまま睡眠欲のままに意識を手放した。






真っ暗な闇の中にいた。独りで。寒くて怖い。そんな感情が私の心を埋める。ただの暗闇なのに。怖くて、動けなかった。

こんな時に思い出したのは青峰で、青峰の名前を小さく呼んだ。でも、青峰はいない。青峰も誰もいない。青峰はいつも私が来てほしいとき来てくれるのに、今は来てくれない。頬を涙が伝うのがわかった。

怖い怖い怖い。そんな時私の肩を誰かが叩いた。振り返って私の前にいたのは…。





「…ライ!!」

目が覚めた。
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