シリウスに手を伸ばして
□二人きり
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次の日の朝。私はそわそわしながら服を選んでいた。この組み合わせでいいかな、髪は大丈夫かな。変なとこはないかそわそわそわそわ。ずっと鏡を見ていた。ナルシストとか涼太みたいで後々考えると相当恥ずかしい。
午後、家のインターホンが鳴った。
『はい、』
そう言うと低い声が聞こえた。
「青峰です」
『今出る』
私は心の中でうわぁぁぁどうしよう、と悲鳴を上げるような勢いだったが、平静を保って玄関を開けた。
「よ、」
『おはよう』
青峰が笑う。あぁもうだめだ二人きりなんて耐えきれない。
「お邪魔します」
青峰は、一回来たことで覚えた私の部屋にずかずかと入っていった。ここ私の家なのに、私の方が絶対緊張してる、そう思った。
『飲み物持ってくるね』
「おう」
青峰は私の部屋のソファに寝転がる。リラックスしすぎだろ!とツッコム余裕もなかった。
ダイニングでお茶をコップに注ぎながら、深呼吸を繰り返す。
落ち着け。合宿だって二人きりなんて何回かあったじゃん。
注ぎ終えて自分の部屋につくと、青峰は私のあげたアロマキャンドルを出していた。
『どうぞ』
「おう」
ミニテーブルにお茶をおく。
『…早速火つけてみる?』
アロマキャンドルを指さして言えば、青峰は頷いた。私があげたのは三つでセットになっているアロマキャンドルだ。
『どの匂いがいい?』
「あー、お前に任せるわ」
私はラベンダー、シトラス、カモミールの3種類からシトラスを選び、火をつけた。
「匂いしてるか?」
青峰が怪訝そうな顔で言った。
『まだ火をつけたばかりだからね。その内わかるよ』
私は青峰が座っているソファに腰掛けた。青峰の隣だ。
「この間って何かすんのか?」
『さあね。私はただ考えごとしたりするけど青峰は考えごと苦手そうだしね』
そう言って笑うと、青峰がうるせ、と言った。
しばらくすると、ほのかに香りだした甘酸っぱい匂い。シトラスの匂いでいっぱいになってきた。
『こうやって匂いで癒されるのが使い方だと思うけど』