シリウスに手を伸ばして

□練習試合
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青峰も涼太もしっかりマークされ、パスは出せない状況だ。

「真太郎」

征十郎は落ち着いて真ちゃんにパスをした。真ちゃんがそれをとって3Pを決める。まずは先制点だ。

『相手はずいぶん落ち着いてるね』

私はそう言った。こういうチームは勝つことを最初に諦めているのか、それとも秘策があるのか。帝光の絶対的力を見てこんな感じのチームはだいたいそのどちらかだ。

「でも練習試合です。とりあえず公式戦で当たる前の様子見だと思います」

テツが返した。なるほど。

昭栄は冷静なパス回し。確実なとこを狙おうという算段なのか、攻めあぐねているように見えなくもない。

24秒クロックが5秒を切った辺りでガードがシュートをうったが、リングに弾かれ、敦がリバウンドを取る。ブレイクのため走っていた涼太にパスが行き、涼太がシュートを決めた。

5対0。いつもと変わらない試合運びだ。ただ、ライの中で小さな違和感が生まれていた。

全国屈指のフォワードにそんな大した才能を見せられていないのだ。
まぁ、まだ試合が始まって数分だ。きっとそのうち何かを。そう思っていたのだが。


1クォーター目が終わり、スコアを見れば25対10。まぁ全国大会出場校の中では平均レベルのスコアだ。ただ、そのフォワードはまだ何も仕掛けてきていなかった。

「まだあちらも様子見のようだ」

征十郎が言った。

『まだ1ピリとはいえ、15点差まで開いても仕掛けなかった辺り、多分自分たちの策に自信はあるはずだね』

私が言う。練習試合だから、どこまで手を明かすかはわからないが、そろそろ仕掛けて来てもおかしくはないはずだ。

でも征十郎も違和感に気づいていた。きっとどうにかはなるだろう。そう思っていた。


「よし、行くぞ」

征十郎の言葉の直後、タイマーがインターバル終了のブザーを鳴らした。スタメン5人がコートに戻って行った。

私はまたテツの隣に腰掛け、試合の行方を見守っていた。

「黄瀬!」

征十郎からパスが回り、涼太のドライブ。そこに青峰のあわせが入り、スコアが動く。
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