シリウスに手を伸ばして

□キセキたちの内心
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紫原敦の場合。





あ〜らら。
赤ちんてば、珍しく理不尽なことやらかしちゃった。



まぁ多分、峰ちんとライちんが仲よくしてるのが気にくわなかったんだと思うけど。

実際一番最初にライちんをお気に入りだと思ったのは赤ちんだし。

横取りされたみたいで面白くなかったんだと思う。



だって俺だって正直峰ちんばっかずるいって思うもん。

赤ちんだったら俺よりもっとずっとそう思っててもおかしくはない。






どこか寂しそうな色を浮かべる赤い瞳に、俺は気づいていた。

そして、こう思ってるのは俺や赤ちんだけじゃないことも、俺なりに一応わかってはいた。

負けるのが嫌いな俺は、峰ちんがかわいそうな目にあってるのを笑ってるライちんに声をかけた。

「ライちん〜、お菓子食べようよ〜」

『チョコ食べたい』

「ん、いいよ〜」

先手必勝?ってやつ。
今回は峰ちんの次の絡み相手になれたことに俺は内心嬉しくなった。










青峰大輝の場合。





「ったく、何で俺走ってんだ?」

本当にそう思う。別に練習中ヘマをやらかしたわけじゃねぇし、アホなことしたつもりもねぇ。
何が赤司を怒らせたのか、全く見当がつかない。


ただ、それもあるけどやっぱり俺の心を占めるのは。

「くっそ、やっぱりライに負けたくねぇなぁ…」

ライが始めてきたとき、なかなかの奴だと思った。しかも女子。もうそいつのバスケの才能は最高峰にいるに違いないと思ったし、この時がこいつのベストだと勝手に思いこんでいた。

でも、実際はそんなんじゃなかった。
女バスの試合の時、こいつには底がねぇんじゃねぇかと思った。しばらく男バスの練習を休み、帰ってきたあの日。まだ伸びるということを身をもって示したライに驚かないわけがなかった。

絶対本人には言わないが、尊敬しているところもある。だからこそ、だ。

「…負けてられっかよ。次は俺が勝ってやる」

残りは…あと43周だかだったと思う。俺はペースを上げた。ライの勝ちだけで今日を終わらせるつもりなんかねぇからな。

俺が走り終わるまで待っとけよ、ライ。




俺がライに抱く気持ちがただのライバルとしてのものだけでないことがわかるのは、もうちょっと後のことになる。
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