シリウスに手を伸ばして
□キセキたちの内心
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赤司征十郎の場合。
『青峰1on1しよう!』
「負けねぇよ?」
『私が勝つよ』
青峰とライの会話が聞こえる。こんな会話も以前はしょっちゅうだったのだが、最近はライが何か思い悩んでいたのか、あまり二人が話すところを見なくなっていた。
最初は喧嘩でもしたのかと思った。でも必要最低限は話すのでそうでもないようだと思った。その後俺は何が原因か考えていたが俺の中で答えが出る前に二人がまた前のような仲に戻って良かったと思う。
『よっしゃ!一本目!』
「だぁぁぁ〜っ!くそっ!!まだまだ!」
練習後にもこんなにはしゃげる二人を見ると、練習をもうちょっと厳しくした方がいいのかとも思ったが、そのとき俺の目には確かに初めて見たライの表情を目にした。
少し顔を赤らめて、青峰に向ける無邪気な表情。顔全体で楽しいのを伝えるようなとびきりの笑顔。それでいて整っているその顔に俺は息をのんだ。
まさか…、な。
そう思って二人のやりとりを見ているが、やはり俺の中の小さな疑念は確信に変わっていく。
俺が男バスの練習誘ったのに。
俺ともよくしゃべるくせに。
芽生えたいつもの俺らしくない感情に、俺は自分を鼻で笑った。
「…?何かしたの?赤ちん?」
俺の隣にいた紫原が言った。
「いや、何もない」
でもまだ本気になる前で良かった。
今ならまだ、引き返せる。
「青峰」
「んあ?」
「外周50。行ってこい」
「は!?俺何かし「逆らう気か?」
青峰は俺の言葉と威圧感に盛大に顔をひきつらせて、バッシュを脱ぎ捨て外に駆け出した。
このくらいの仕打ちは許してくれよ。俺は敗北する気なんかさらさらないんだから。敗北の前に身を引く男もなかなかだろう?
青峰の様子に笑うライに心の中でそっと問いかけた。