シリウスに手を伸ばして

□理由
1ページ/8ページ

呆然としていたらハーフの練習をしにやってきたので急いでよけた。未だにこの展開が信じられなかった。

ベンチに戻ると、マネージャーがタオルと飲み物をくれた。監督が何かしゃべってるけど、自分の中の怒りとかの方が大きくて何も聞き取れなかった。

監督が話を終えると同時にハーフの練習の時間も終わった。

私がうつむいていたら、後ろから誰かに小突かれた。

「おい」

その声に振り向けば、立っていたのは青峰だった。
女バスの皆はゴールが空いたのでシューティングをしに行った。

「柄にもなく落ち込んでんのか」

『…』

何も言えない。勝ちたい。でもどうしたらいいかわからないのだ。美奈は成長が止まった私を止められる。私は成長し続けた美奈を止められない。ただそれだけのことだ。

「諦めんなよ。ライだって俺らと練習してたんだ。しかも赤司のメニューで。伸びてねぇなんてことはねぇよ」

青峰の大きな手が私の頭をなでた。

『汗かいてるよ?』

「別にいい」

「…まだ使い方がわかんねぇだけだ。俺とか赤司のプレーを真似て見ろ。最初はもたつくかもしんねぇけど、お前なら出来る」

ハーフタイム終了一分前のブザーが鳴った。

『…わかった』

「勝てよ。皆待ってる」

青峰はそれだけ告げると、また歩き出した。私はラスト一分間、征十郎や青峰のプレーを思い出していた。

ハーフタイムが終わった。
ついに後半が始まる。

「黎稜ー!帝光に勝てー!」

「下剋上だー!」

観客席からの応援は試合前とは異なっていた。それでも、私には関係がない。タオルをベンチにかけ、飲み物を一口だけ口に含んだ。

じゃまずは、青峰に言われたこと、やってみるよ。

美奈と向かい合った。負けたくない。…負けない。

審判の笛が鳴る。最初は帝光側のボールだ。

「ライ」

ボールは私に回ってくる。

私は美奈をじっくり見たそしてドリブルをつき始める。

ドリブルでリズムを刻み、タイミングを計る。

…今だ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ