シリウスに手を伸ばして
□理由
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呆然としていたらハーフの練習をしにやってきたので急いでよけた。未だにこの展開が信じられなかった。
ベンチに戻ると、マネージャーがタオルと飲み物をくれた。監督が何かしゃべってるけど、自分の中の怒りとかの方が大きくて何も聞き取れなかった。
監督が話を終えると同時にハーフの練習の時間も終わった。
私がうつむいていたら、後ろから誰かに小突かれた。
「おい」
その声に振り向けば、立っていたのは青峰だった。
女バスの皆はゴールが空いたのでシューティングをしに行った。
「柄にもなく落ち込んでんのか」
『…』
何も言えない。勝ちたい。でもどうしたらいいかわからないのだ。美奈は成長が止まった私を止められる。私は成長し続けた美奈を止められない。ただそれだけのことだ。
「諦めんなよ。ライだって俺らと練習してたんだ。しかも赤司のメニューで。伸びてねぇなんてことはねぇよ」
青峰の大きな手が私の頭をなでた。
『汗かいてるよ?』
「別にいい」
「…まだ使い方がわかんねぇだけだ。俺とか赤司のプレーを真似て見ろ。最初はもたつくかもしんねぇけど、お前なら出来る」
ハーフタイム終了一分前のブザーが鳴った。
『…わかった』
「勝てよ。皆待ってる」
青峰はそれだけ告げると、また歩き出した。私はラスト一分間、征十郎や青峰のプレーを思い出していた。
ハーフタイムが終わった。
ついに後半が始まる。
「黎稜ー!帝光に勝てー!」
「下剋上だー!」
観客席からの応援は試合前とは異なっていた。それでも、私には関係がない。タオルをベンチにかけ、飲み物を一口だけ口に含んだ。
じゃまずは、青峰に言われたこと、やってみるよ。
美奈と向かい合った。負けたくない。…負けない。
審判の笛が鳴る。最初は帝光側のボールだ。
「ライ」
ボールは私に回ってくる。
私は美奈をじっくり見たそしてドリブルをつき始める。
ドリブルでリズムを刻み、タイミングを計る。
…今だ。