シリウスに手を伸ばして
□嫉妬と苦悩
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ベンチにいた誰かがそう言った。
ライの初めての試合。ライは3分の出場にも関わらず、シュートを4本決めてきた。コーチやたくさんの上級生がライを誉めた。私もただ純粋にライがすごいと思った。
「ライすごいじゃん!」
『へへ、ありがとう!美奈がいつも見てくれたからだよ!』
笑うライに私はいつも通り笑い返した。
その日から。上級生とコーチはライによく注目するようになった。たしかにまだ初めてそんなに時間もたっていないのに、ライはユニフォームを勝ち取り、試合にも出て、チームの勝利に貢献した。注目しないわけがなかったのだ。
「ライ、ここはもっとこうして…」
コーチもライに少しずつ難しい技を教え始めた。吸収の早いライは言われたことをすぐにマスターしていく。気づけば、私の隣にいたはずのライはいなくなっていた。
私が教えていたものよりもずっと難しいことをライはコーチから指導され、それを身につけていく。
私の心を虚無感や悲しみが埋めるのはそんなに難しいことではなかった。
ある日。ミニバスでゲームの練習があった。ミニバスは4Q連続で選手が出続けることはできないので、通常はベストメンバー5人とレギュラー5人が力が均等になるよう分けられ、それぞれのチームが1、2Qに出て、3、4Qはベストメンバー5人が出る。
そのベストメンバー対レギュラー5人の試合だった。
小3の秋、ミニバスの引退試合間近なこのとき。私とライはまだレギュラーチームの方にいた。でもこの歳でここに入っていればそれは結構すごいことだった。
試合が始まった。同じように試合に出ているとは言っても、やっぱりベストメンバーは上手い。じわじわと点差は離れる。
私はいつもこの結果が悔しかった。ベストメンバーに勝ちたい、ベストメンバーを抜いて点を入れたい。そうずっと思っていた。