シリウスに手を伸ばして
□以前の5人目
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男バスの体育館をのぞくと、ディフェンス練習をしているようだった。皆きつそうな顔をしてやってる。
『さつきー』
小声で私はさつきを呼んだ。さつきがこちらを振り返る。そして呼んだのが私だとわかると、すぐに笑顔で答えてくれた。
「ライ!」
今メニュー最後から三つ目なの、とさつきが言った。皆こんな汗だくで辛そうな顔してるのにまだメニューあるのか。さすが征十郎、なんて大した感心はしてないクセに思った。
何人かが私が来たことに気づいたようで、テツがペコリと頭を下げた。私はそんなテツに手を振る。征十郎も手を振ってきた。
私はさつきと話しながら男バスの練習が終わるのを待つことにした。
『アイツもっと腰低くした方がいいよね』
『あの人は重心の移動が苦手だからそのメニュー考えてやった方いいかも』
さつきと練習を見ながら、個人個人の癖や苦手を告げると、さつきはちょっと待って!とメモを用意してきた。
「ライもっかい言って!」
私はさつきに言うべきことは全部言った。
でもこうやって見ていて思う。
本当にスタメンは動きが違う。
贔屓目なしに見て相当なレベルにいる彼らのプレーを見るとなると、どうしても派手なプレーばかりを目で追ってしまいがちだが、そんなところで上手か下手かを分けているわけではない。
彼らはまず基礎がしっかりしているのだ。体格などの天性のものも備わっている人もいるが、身体全体の筋肉のバランスや体力、自分でどうにか出来るものはベストの状態に仕立て上げている。
そしてもちろん個人のスキルは誰もが認めるだろう。でもその軸にはやっぱり精神的な強さがあるように見えた。精神はどんなスポーツをやる上でも大きな柱だろう。精神が弱くては上には這い上がれない。
メニューが次のものに移った。私はさつきと話しながらメニューが終わるのを待った。
『お疲れ様』
「ホント今日は疲れたっスよ」
涼太が言った。
『でも今はちょうど公式戦の二週間前でしょ?この頃に追いつめておかないとダメなんだよ』