シリウスに手を伸ばして
□認めないなら
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「全員聞け。今日から練習に参加する女バスのエースの藍澤ライだ。彼女は女バスの練習と交互に参加することになる」
赤司が私の紹介をする。もちろんどよめきは起きる。それもそうだろう。急に今まで自分たちが苦労してやっと入れた一軍の練習にぽっと出の女子が入るなんて誰が考えるだろう。
『誰にも負ける気はない。よろしく』
それだけ私は言った。名前は赤司が言ったし、あとは特に何も言うことはない。
涼太や黒子君、青峰は楽しそうに笑っていた。紫原は何も感じてなさそう。ただ他の奴らは不服を隠せないようだった。緑間もやっぱり女子が入るのはあまり乗り気ではないらしい。
「うるさいぞお前等。言っておくが体格のハンデはあるが、ライのスキルは青峰に並ぶぞ」
その赤司の声に、騒々しかった体育館は一気に無音になった。そして私は、その赤司の言葉に続けるように言った。
『すぐに認めろとは言わないさ。君たちのにじむような努力だってわかる』
私は半袖のTシャツを肩まで捲り上げて笑った。
『ただ認めないなら私が認めさせてやるだけだよ』
その言葉に小さく赤司が笑った。自分の隣に立つその人物と目を合わせ、私も笑った。
「じゃ始めようか」
赤司の声と共に練習が始まった。今私がいる隣の体育館では女バスが練習をしている。女バスの皆は一体このことをどう考えているのだろう。
男バスの練習も最初は女バスと変わらない。フットワークをして体を動かす準備をする。その後は2メンや3メンなど基礎練習だ。
「ライ!」
「赤司!」
私の2メンの相手は赤司。まさかの彼からのご指名に驚きはしたが、相手に不足はない。
互いの名を呼び合い、パスをしてレイアップまで続く。
なんて楽しいんだろう。ふとそう思った。女バスのNO.1である自分より上手い人はいつもの練習ではいない。ところがここはどうだろう。
私より上手いかもしれない人や体格などどこかでハンデとなってしまう相手ばかりだ。
逆境には燃えやすいタイプの私には最高の練習の場所である。