平和と家
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バランス感覚を狂わせて慌てる敵に銃やセラフィムの羽を当てるのが基本の攻撃となる予定だ。
「…だんだん立ってる時間も延びてきたよ」
と雲雀が言った。名前は立ち上がることが出来ない。なのでとりあえず頷いた。
「…少し休憩しよう。このまま続けていたら多分君の三半規管がやられるよ」
雲雀は一時間後にまた来る、と言ってその場を去った。群れるのが嫌という理由でいまだ修行中以外は名前と雲雀は一緒にいることもなかった。
雲雀がいなく自分一人じゃ立ち上がることも出来なかった名前はぼーっと中庭に一人座っていた。今日はルッスーリアもスクアーロもベルもマーモンも任務だったから多分中庭に近づく人はいないだろう。
名前はふと上体を倒し中庭に横たわった。草のクッションがなんだかやんちゃな子供時代を思い出させる。風が吹けば一瞬花壇の花の香り。なんだかここは贅沢スポットかもしれない。名前はそんなことを思っていた。すると誰かが声をかけてきた。
「あ、名前先輩ー、何してんですかー?」
この声はフランである。
『んー修行の合間のリラックス』
「こんなとこでですかー?」
フランは横たわる名前の隣に腰を下ろした。
『何か立てなくなっちゃう攻撃の練習してたから』
「立てなくなっちゃったんですかー」
その問いかけに名前は頷いた。そしてフランも名前の横で寝転がった。
「そう言えばー、何で先輩ってヴァリアー入ったんですかー?」
フランの何気ない疑問。まだ心の傷を拭えたわけではない名前には一瞬何かが突き刺さったかのような痛みが走った。でも、名前は包み隠さずあったことをフランに話した。フランは何も言わず聞いてくれた。一瞬涙が零れそうにもなったがぐっとこらえた。話し終えると、フランは言う。
「そーだったんですかー…すみませーん、思い出させちゃって」
フランは言い方は変わらなかったがいつものポーカーフェイスに少し眉間の皺が刻まれていた。
『ううん、私も少しずつではあるけど前進していってるつもりだからもう泣くばかりはやめなきゃ』