シリウスに手を伸ばして

□嫉妬と苦悩
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でも口で言うほど簡単じゃない。ベストメンバーはやっぱり上級生で体のサイズも違ければ、経験だってあっちの方が上だし、スキルも自分が上だなんて一度も思ったことはなかった。

「ライ!!」

私はボールをライに回した。ライはボールをもらって、ディフェンスを見る。そしてドリブルをつき始める。一対一を仕掛けるつもりだ。

「ライいけ!!」

一緒に出ている先輩が叫んだ。ライはレッグスルーからのクロスオーバーを使う。少しベストメンバーの先輩の脚がもたつく。ライはこれをチャンスと思い、そのままトップスピードで先輩の左を抜いた。そこに他のディフェンスがフォローに入るが、二人来たフォローの間をライはいとも簡単に割ってレイアップした。

その瞬間のことは今でも鮮明に覚えている。ライが放ったボールがリングを通る。ネットをくぐり抜けたボールがバウンドした。

これは下級生としてはあまりに珍しい快挙だったのだ。
いけと指示を出した先輩や他の先輩がライの頭をグシャグシャになでて、よくやったと笑ってハイタッチをした。ベストメンバー側も信じられないと言った顔だ。

その試合は負けて終わってしまった。が、他に変化が現れた。

「ライ、ベストメンバーの方に入れ」

コーチが私とは違う色をしたナンバリングをライに渡した。

『ありがとうございます!』

ライはコーチに頭を下げた。これは、ライのベストメンバー入りを示していた。私の視線はライが持つナンバリングにとらわれていた。

その日を境にライはベストメンバーの方で試合に出る回数が増え、小4になる前にベストメンバーの一員となった。

私の手に握るライとは色が違うナンバリングに皺が寄る。握りしめて唇を噛みしめて悔しがった。
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