キラキラ2

□過去でも未来でも
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買い物を終えて帰ろうとした時、主4の視界にある人物が一瞬だけ映った。そのため主4はピタリと立ち止まり振り返る。


「主4?」

「主3!ゴメンけどちょっと先に帰ってて!」

「え!?ちょっ…!」


主4は主3にそれだけ言うと再び道を走って戻っていった。


「(今、確かにあの人が……)」


主4は先ほど見かけた人物を探しながら必死に走る。だがそのせいで何かに躓き転んでしまった。


「いったぁ〜…」

「おい、」

「?」

「邪魔だ」


上から振ってきて声に顔を上げれば主4の探していた人物が主4のことを見下ろしていた。主4はパァと顔を明るくさせる。


「居たぁ!高杉さん!!」


主4はその人物の名を言いながら飛びつかんばかりに立ち上がった。そう、主4が先ほど見かけて探していたのは高杉だったのだ。


「(過去の高杉さんは片目じゃないんだ〜!)」

「な、何なんだお前」


初対面で名前を知っており何故かキラキラとした視線を向けてくる主4に高杉は怪訝な顔をするとともに警戒する。
だが主4はそんなことを気にすることもなく興奮した面持ちで高杉へと詰め寄った。


「高杉さん今彼女は?好きな人は?」

「は?」

「いないなら、主4、立候補します!」

「…何言ってんだ……」


完全に呆れてるというか引いてる高杉。主4は相変わらず嬉しそうな表情を浮かべているが、次の瞬間少しだけ瞼を落とした。


「だって、もし主4が高杉さんに誰よりも…主2よりも早く会えてたら、何か変わってたんじゃないかな、ってそうずっと思ってたんです」

「……」

「なんちゃって。そんなのに高杉さんは左右されませんよね」


主4はえへへ、と笑う。だがその笑顔は明らかに悲しそうでもあった。


「(自分が過去にどうやっていたって未来も、高杉さんの気持ちも変えられなんてしないんだ)」


主4は心の中でそう呟くと、くるりと高杉に背を向けた。


「過去の少し新鮮な高杉さんを見れただけでもよかったです!今日のことは忘れてください!それじゃあ!」

「待て」


去っていこうとした主4に、高杉は主4の肩を掴んで再度こちらへ振り向かせた。
主4がきょとんとする中高杉はそのまま主4の足元に屈んだ。


「高杉さん!?!!?」

「……」


高杉は無言で先ほどこけた時に擦りむいたのであろう主4の膝に、自身の着物を引きちぎった布を巻き始めていた。その行為に主4は顔を真っ赤にしてわたわたと慌てる。

巻き終わると高杉は立ち上がり、真っ赤な主4の顔を見てフッと笑った。


「忘れろってのは印象が強すぎてちょっと無理な話だな」

「!」


ますます顔を赤く染める主4。そんな主4に高杉は「じゃあな」とだけ言って去っていった。


「……」


主4は去って行く高杉の背中を見つめながらギュウ、と胸元を押さえる。
こっちを見てください。そう叫んでしまいたい台詞も今は飲み込んで、ただただ見えなくなるまでその背中を見続けていた。









過去でも未来でも


(相変わらずの人達とその気持ち)
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