キラキラ2

□さよなら過去
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「……やっと見つけたぁ…!!」


主1が橋の下を覗けばそこに沖田は膝を抱え丸くなっていた。
日はもうすでにだいぶ傾いている。


「沖田さん、帰ろう?」


主1が沖田の手をひこうとする。だが沖田はそんな主1の手を払った。


「何できたんでぃ」

「そりゃ、私は沖田さんの補佐だもん」

「はぁ?補佐?んなもんにならせた覚えねーやぃ、奴隷が」

「うっ……」


小さい沖田の吐く毒に地味にダメージを受ける主1。言葉が詰まり沈黙が流れる。


「…主1もあの野郎と一緒に居た方が楽しいんだろぃ」


突然、沖田はそんな台詞を呟いた。思わず主1はぽかんとする。それと同時に「あぁ、そうか」と沖田の気持ちを理解した。"あの野郎"とはきっと土方のこと。沖田はミツバや近藤が土方にとられて寂しいのだ。


「土方さんといることは楽しいよ」


主1はうーんと唸って悩んだ末にそう返した。沖田はその台詞にぐっと眉根を寄せた。


「気にくわねぇ…!あの野郎も主1も全部気にくわねぇ…!」

「沖田さん、沖田さん」

「……何でぃ」

「私ね、こっちの世界にきて毎日がキラキラとしてるの」

「は?」


突然飛び出してきた主1の突飛な会話に沖田は思わず面食らう。主1はというとただどこか遠くを見つめたまま話していた。


「私のもとの世界の家さ、もう笑えちゃうくらい昼ドラみたいなドッロドロな家庭でさ」

「主1…?」

「だから、真選組の家族みたいな絆、初めてここで知った」


主1がやっと沖田の方を見た。笑っているその顔は触れれば壊れそうなほど不安定で。だが今の幼い沖田には真選組やら聞きなれない単語が多く、ただ話を聞くしかできなかった。


「それでさ、そんなんだから今まで寂しいなんて当たり前のことで思ったことなかったんだけど、この世界にきて、この世界の温かさを知って、いつかそれがなくなるかもしれない日のことを考えたら最近すごく胸が痛い」

「……」

「すごく寂しいんだ」


主1の声が河川敷に静かに響き消えていった。だが次の瞬間には「だからさ!沖田さん!」と元気良く口を開いた。



「寂しいって感じることってね、とても素敵なことなんだよ!だってそれってちゃんと愛情を知ってるって証拠なんだから」


私が皆に会って始めて寂しいって気持ちを知ったようにね。そう主1は明るく言った。


「ミツバさんや近藤さんは沖田さんのことちゃんと愛してくれてるんだよ。…近藤さんが愛ってちょっと可笑しいけど。まぁ、だから、要するに、そんなに不貞腐れる必要はないと思うよ……って、あれ、沖田さん?」


主1が沖田の顔を覗き込めば沖田は目元をゴシゴシとこすっていた。その袖にはうっすらと水の跡がついている。


「べ、別に不貞腐れてなんかねーし、こっち見んな!!つか主1が寂しいって思わなかったのはただの能天気な馬鹿だったからだろぃ」

「あはは!そうかも!」


相変わらず目元を拭っている沖田の横で主1は笑い声をあげる。そしてその状態が数分続いたのち、沖田が力強く立ち上がった。


「主1、帰ろううぜぃ」

「了解!お腹すいたもんね!」

「さっき蕎麦食ったばっかじゃねーかぃ」


沖田は涙を見せたことが恥ずかしいのか、避けるように主1の数歩前を歩く。
だがその時後ろを歩く主1が「あ、やばい」と声をもらした。


「どうしたんでぃ」

「あ、えっと、私、あそこにアレ忘れちゃった!アレ!」

「まったくわかんねーし。どこに何を忘れたんでぃ」

「ええええっと!だから!ちょ、ちょっと取りに戻るから先帰っててええええ!!」

「あ、おい!」


主1は突然全速力で道を引き返していった。そんな主1の背中に沖田は叫ぶ。


「じゃあ先帰ってるからなー!」

「うんー!あ、私が言うまでもないと思うけど沖田さんは沖田さんらしく生きなよー!」

「はー!?遠くてもう何言ってるか聞こえねーっつーの!」


大声を出した沖田は「ふぅ」と息をつくと、くるりと前に向き直って先に家へと帰っていく。

主1は遠くの方でその沖田の様子を確認すると、自分も前を向いた。


「さて、私も帰るか!」









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