キラキラ2

□さよなら過去
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近藤、土方、沖田、ミツバと主1達四人は店を出て道場までの道をのんびりと歩く。


「まぁ、残りの時間この過去を堪能しますか…」

「うん、そうだね」


日がだんだんと傾いていく。その時「あら?」とミツバが声をあげた。


「そーちゃんがいないわ」


ミツバに言われて辺りを見回せば、確かさきほどまでいたはずの沖田の姿がなくなっていた。


「そういや、さっき沖田さん元気なかったよね…」

「わ、私、沖田さん探してくる…!!」


主4が呟けば主1が沖田を探しに行こうと、もと来た道を戻ろうとする。
そんな主1の手をミツバが掴んだ。


「…ミツ…バさん?」

「主1ちゃん、そーちゃんならこの道を真っ直ぐ戻った土手にいると思うわ」

「本当ですか!?わかりました!」

「…そーちゃんのこと、よろしくね」


ミツバは主1の目を真っ直ぐに見つめてそう言った。その言葉は深く主1の心に響き、主1はひとつ強く頷く。そしていつものようにニパッと笑った。


「まかせてください!なんたって私、沖田さんの補佐ですからっ」


主1はそう言うと、ミツバの教えてくれた方へと走っていた。
一方主1が去っていった後、近藤は先ほどの主1の台詞に横で首を捻らせていた。


「?主1ちゃんはいつから総悟の補佐になんてなったんだ?」

「まーまー!さ、沖田さんのことは主1に任せて、主4達は先に帰りましょー!」


主4が立ち止まっている近藤の背中を誤魔化しながらグイグイと押していく。

そうしているうちにタイムリミットは刻一刻と近づいてきていた。


「…そろそろ、日が落ちるね」

「うん…」

「そうね」


すでに地平線辺りで揺らいでいる夕日に、主3、主4、主2は互いに目配せをして頷き合った。
そしてそれを合図に主4がくるりとミツバ達へ振り返る。


「近藤さん、土方さん、ミツバさん。主4達、ずっと黙ってたことがあるんだけど聞いてくれる?」

「な、何だ?あらたまって…」

「主4達ね…実は…月の世界の住人なの…」

「「は?」」


主4の台詞にポカンと口を開ける近藤に土方にミツバ。その反応に、主2は急いで主4の腕を引っ張り引き戻した。


「だからそんな無茶苦茶な設定じゃダメって言ったじゃない」

「でもこれでいこうって多数決できめたんじゃん」


主4と主2は影で少し前にこっそりと企てていた計画の言い合いをする。主3はただ苦笑いを浮かべるしかなかった。


「月の住人ってお前らふざけ…」

「な、なんでもっと早く言ってくれなかったんだ!!」

「まさか主3ちゃん達が月の住人だなんて」


しかし以外にも土方以外は上手く騙されてくれたようだった。それに主4は小さくガッツポーズをして話を進める。


「それでね、もう帰らないといけないの…。だから今まで短い間だったけどありがとうございました」

「も、もう一生会えないのか…?」

「え、うん…、たぶん…ね」


目に涙を浮かべてきた近藤に三人は曖昧に目線をはずす。未来で普通に会えるよとは言えなかった。


「じゃ、そういうわけだから!」


空気に耐えきれなくなった三人は踵を返してそこから逃げるように走りだした。そして近くの林へと駆け込んだ。


「なんとか乗り切れたんじゃない?」

「後は戻るだけだね」


林の中で三人がそんな会話をしながら息を整えていると、ガサリと音が聞こえた。三人が驚いて音の方を見ると、息をきらしたミツバが木々の間から顔を覗かせていた。


「ミツバさん…!?どうしたんですか!?」


主3が急いでミツバに駆け寄りその身体を支える。


「ちょっと、伝え忘れたことがあったから…」


ただでさえ身体の弱いミツバが走ったのだ。ミツバは苦しそうに微笑んだ。


「なんですか…?」

「貴女たち、私に会えて嬉しいって言ってくれたじゃない?それで、私は言い忘れたなぁって…」

「……?」

「私も貴女たちに会えてよかったわ。短い間だったけど楽しかった」


ミツバの言葉に三人は目に涙を浮かべて、堰を切ったようにミツバに抱きついた。


「ミツバさん〜〜〜〜!!!」

「ぐすっ、ちょっと主4…!ミツバさんに鼻水つけちゃ…ダメ…だからね…!」

「…………っ」


大泣きをしながらミツバを胸に顔を埋める主4に、主4に注意をしながら自分も少し泣いている主3、そして黙っているがこっそり涙ぐんでる主2。そんな三人をミツバも抱きかえそうと手を回す。だが、その手が触れたのは主2の体だけで、主4と主3の体にはスカッと空を切った。


「…どうやら主3ちゃんと主4ちゃんは月に帰っちゃったみたいね」


月の住人という話を信じているのやら、いないのやら消えた主4と主3にミツバはそう言って淋しそうに笑った。


「あれ、うちの体だけ消えないんですけど…」

「まだ、ここに心残りがあるからじゃないかしら?」

「え…?」


きょとんと立ち尽くしている主2に、ミツバはそんな主2の背中をポンっと押す。


「十四郎さん…でしょ?早くいってらっしゃい」

「でも…」

「ね?」


ミツバの笑顔に主2は唇を噛みしめる。


「…じゃあ、少しだけ話してきます」


主2はミツバにぺこりと頭を下げ、林を抜けて、土方のもとへと走る。走っている間、主2は考えていた。



「(ミツバさんは本当に素敵な女性だ)」


自分だったら自分の好きな人のもとへ行く女の子の背中を笑顔で押してやることなんて、きっとできないだろう。
だから、きっと自分はミツバには一生敵わない。昔も、今も。きっとこれからも。


「主2…?」


走り続けていれば、やっと土方を見つけた。土方は息を切らして、汗だくな主2をみて目を見開いた。


「土方さん…!うちは、土方さんの幸せを願ってる…!普段なら他人の幸せなんて糞食らえなんだけど…」

「糞食らえって、おい」

「でも、土方さんには本気で幸せになってほしいって思えるの」


たとえその相手が自分じゃなくたって。


「なっ、急に何言ってんだお前…」

「ミツバさん泣かしちゃダメよ、鬼の副長さん」


主2がそう言って微笑んだとたん、主2の体はスゥッと消えていった。
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