キラキラ2

□イッツ・タイムスリップ!
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「あぁん?主1ちゃーん?過去ってどういうことですかぁー?うち達はただでさえトリップを経験したのに、そのうえタイムスリップまで経験しちゃったってことですかぁー?」

「う、うぐっ!」


主2は主1の顔面を掴み上げていた。


「こ、これのおかげで仕事サボれるんだからいいじゃないか…!」

「それもそうね」


そのとたん主2はパッと主1から手を離し、主1の体は勢いよく地面に落下した。


「よくないから!てか、これどうするの!?どうやって元にもどるの!?」

「その辺は源外さんが考えてくれてるよ!…きっと」

「何それ不安!!」

「そもそもここってどこなの?過去っていっても江戸ではないよね…?」


主4が辺りを見回しながら不安げに聞いた。確かに辺りは江戸とは似てもにつかない田んぼや森に囲まれた田舎道だった。


「……とりあえず、探索でもしてみようか」


主3が諦めたようにため息をはきながら言う。いつまでもここで突っ立っていてもどうにもならないのだから仕方が無い。そういうわけで四人は歩き出したのだが、少しして一軒の廃寺の前へ来ると主4が足を止めた。


「ねぇ、なんかこっちから声が聞こえない?」


主4に言われて三人も耳を澄ます。確かに大勢の男たちの声が聞こえる気がした。


「ちょっとだけ見に行ってみる?」


と、まず好奇心から言い出したのは主1だった。


「喧嘩してるっぽいし、関わらない方がいいって」

「えー、いってみようよ!何か分かるかもだし!」

「そうね、物陰から眺める程度ならいいんじゃないかしら」


主3は乗り気ではなかったが、以外にも主4と主2は乗り気であったため、多数決で四人は廃寺へと入ることにした。
そして四人が石段を登りきるとそこには大勢の野蛮そうな男達が一人の男を囲んでいるという、まるでリンチの起こる直前のような光景が広がっていた。


「やっぱ、喧嘩だ」

「あれ、でもあの真ん中のポニーテールの男なんか見たことあるような…」

「お、あんたらも見物人か?」


物陰に隠れて様子を見ていれば、端の方に立っていた男が自分達を見つけて声をかけてきた。思わず四人はビクリと肩を揺らす。するとそれを見て男がガハハと笑った。


「そうビックリしなくても、俺も物見遊山にきただけだよ」


わりと友好的そうな男に、四人はほっと肩の力を抜いた。よく見ればその男には髪型は違うものの近藤の面影があった。


「物見遊山って、今、何が起こってるの?」

「あの大勢に囲まれてるポニーテールの男がいるだろ?アイツが最近近隣の道場の連中に片っ端から喧嘩売ってしばき回っててな、そいつに制裁をくだそうっつって、道場の奴らが集まって、今その制裁をくだすところなんだよ」

「ふぅん。じゃあ、この状況はあのポニーテールの男の自業自得ってわけね」

「まぁ、そういうわけだな。だがあの男も太ェ野郎でなぁ。この大人数を前にしても物怖じして詫びの一つも入れやしねぇんだ」


近藤に似た男が言った通り、ポニーテールの男はまったく物怖じせず、それどころかたった一人で多勢相手にバッタバッタと敵をなぎ倒していた。


「(あの剣の振るい方…)」


ポニーテールの男の戦いっぷりに主2達はただ感心しているだけなのだが、主1は何か思う節があるのか、ジィッと男のことを観察していた。

だがその時、唐突に主3が喧嘩の中心へと突き進んでいった。


「主3ちゃん!???」


突然の主3の行動に、その場にいる全員が目を丸くさせた。主3は集団の前まで行くとキッと睨んで「貴方達!」と叫んだ。


「確かにそこのポニーテールの人にも非はあったかもしれないから喧嘩するのはいい、けど、一人相手にこんな大勢で寄ってたかって卑怯だと思わないの!?」


曲がったことが嫌いな主3はこの状況を目の当たりにして黙って見ているということができなかったのだろう。主3がそう言うと、集団はザワザワと騒ぎ出した。


「なんだ?この女ァ?」

「もしかしてお前、野郎の女か?」

「なら、ちょうどいい。ちょっとこっちに…」


主3をポニーテールの男の彼女と勘違いした集団の一人が、主3を捕まえようと手を伸ばした。

だがもちろん主3に手を出そうものなら、黙ってはいない人物がいるのをこの男は知らなかった。そのためその男は無残にも一瞬でぶっ飛ばされてしまった。


「私は喧嘩とかどうでもいいけど主3ちゃんに手を出すならどうなってもいい覚悟あるんだよね?」

「主1!」


主1が急遽近藤から借りた木刀を構えながら、普段とは違う不敵な笑みで主3の前に立っていた。


「な、なんだこいつ…」

「あとさっき誰か主3ちゃんのことポニーテール男の彼女とか言ってたの訂正しろバカアアアア!!!!」

「は!??」


突然キレだした主1にビクリとする反面、文字通り「は?」と固まる集団の男達。


「主3ちゃんはあの男のものでも、ましてやどっかの銀髪男のものでもない!私のもー…」


ドコオ!!!!


突然先ほどまで蚊帳の外だったポニーテールの男が背後から主1の頭を木刀で殴った。それにより主1は話の途中だったが白目を向いて地面に倒れこんだ。

周りが呆気にとられているなか、ポニーテールの男は倒れている主1の襟首を掴むと、主3へと投げ捨てた。


「邪魔だ。ソイツ連れて出てけ」

「でもそれじゃ貴方が…」

「俺の喧嘩だ。他人がとやかく首を突っ込んでくんじゃねぇ」

「確かにあたしは他人だけど、貴方が喧嘩をして傷つけば悲しむ人だっているでしょ」


ギロリと睨んでくる男の瞳孔の開いた目を主3は物怖じせずに見返した。その目線に先に耐えきれなくなったのはポニーテールの男の方で、男は主3からふいっと目線を外して呟いた。


「いねぇよ、そんなの」

「え……」

「いいから早く出て行かねぇとテメェも一緒にぶっ飛ばすぞ」


ポニーテールの男に殺気のこもった声でそう言われ、主3はしぶしぶ気絶した主1を引きずって物陰へと戻っていった。


「主1と主3大丈夫!?」

「うん。あたしは全然平気だし、主1は少し気を失ってるだけ。血も出てないし平気だと思う」

「…にしても野郎何のマネだろうな。自分が不利になるだけだろうに」


近藤の言葉通り、いくらポニーテールの男が強くても大人数相手に明らかに手こずっていた。


「…手なんかかりたくないんじゃないの?負けず嫌いなのよ」


主2がポニーテールの男を見つめながら呟いた。

それから数分後、やはりあの大人数相手に勝てるわけはなく、ポニーテールの男は最後の最後まで暴れ続けた挙句、ボロ雑巾のように一人、地面に伏していた。

そしてその男の側に近藤に似た男が佇んだ。


「俺はコイツを自分の道場に連れ帰ろうと思う」

「連れ帰ってどうするの?」

「何もしないさ。このままだとコイツこのまま野垂れ死んじまいそうだしな」

「そのお人好しさ、顔だけじゃなく中身まで近藤さんにそっくりだね。あ、近藤さんってのは主4達の知り合いなんだけど…」

「?よく俺の名前を知ってるな」

「「え!??」」


主3が震える指で近藤似の男に指を差した。


「近藤……さん?」

「あぁ、俺は近藤勲だ!」

「「ええええええええ!!???」」









イッツ・タイムスリップ!


(昔の近藤さん……別にそこまでゴリラじゃない!!)

(ツッコムとこそこ!??)
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