キラキラ2

□過去でも未来でも
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その日、沖田が道場に来なかった。ちなみにまだ四人は過去の世界のままである。


「沖田さんどうしたんだろうね」


主1は道場で竹刀を振りながらそのことを心配したように主2に話した。だが稽古を端っこで見学している主2は主1とは打って変わって「風邪でも引いたんじゃないの?」と平然と答える。


「あ、でも馬鹿は風邪ひかないって言うしな…」

「沖田さんにでも物怖じせずにそういうこと言うの、本当主2ちゃんぐらいだよね」


思わず主1も苦笑いを浮かべる。そんな二人のもとに近藤が近寄ってきた。


「確かに心配だからちょっと主1ちゃんと主2ちゃんとトシで見てきてくれないか?」

「え、俺もかよ」


いきなり名前を呼ばれた土方は明らかに嫌そうな顔をする。だがそれを近藤が「当たり前だ!同じ門下生だろう」と一喝した。

というわけで沖田家へと向かうことになった主1と主2と土方なのだが、そのころ沖田家では……


「そーちゃん、稽古の時間よ」


ミツバは部屋で寝転んでいる沖田にそう呼びかけるが、沖田は準備どころかまるで起き上がろうともしなかった。


「どうしたの?いつもは勝手に早起きして道場に行くのに。道場で何か嫌なことでもあったの?」

「…………ムカつく奴がいるんです」


沖田はしばらく黙った後、むすっとした声でそう言った。ミツバは「ムカつく人?」と首を傾げる。


「僕より後輩のくせにタメ口だしナマイキだし…」

「この間から道場に来てるあの男の人?」

「アイツが来てから近藤さんもあんまりかまってくれないし、…主1だってアイツと手合わせしてばっかだし」


主1の事については近藤の事よりもボソボソと話す沖田。


「もうヤダ。僕、道場行きたくないス」

「そーちゃん…」


ミツバは困ったように沖田の側に座り込む。

その時、ザッと誰かがその部屋の前に佇んだ。ミツバと沖田は驚いて振り向く。


「沖田先輩、稽古の時間ス」


そこに立っていたのは土方だった。


「てめーなんで人んちに来てんだよ!!」

「近藤さんに連れてこいって頼まれたッス。それに俺だけじゃなくて主1と主2も一緒スよ」


土方の台詞の後にその土方の後ろから主1と主2が「やっほー」とひょっこり顔を覗かせる。


「何なんでぃおめーら!出てけよ!」

「まったく、沖田さんのサボり癖はこの頃からなのね」

「聞いてんのかオイ!!」

「聞いてるわよ。さ、沖田さん。ここはうちに任せて早く稽古に行きなさい」

「全然聞いてねーじゃねーかぃ!何が任せてでさぁ!てめーはここでサボる気なんだろ!」

「え!主2ちゃんサボるの!?じゃあ私も…」

「マジで何しにきたんだよてめーら!!」


ここは任せてなんてカッコいい台詞を言いつつ、心の中ではサボる気満々の主2に、それに便乗しようとする主1。珍しく沖田はひたすらつっこんでいる。

その時、突然言い合いをしていた主1と沖田の襟首が、土方によりむんずと掴まれ持ち上げられた。


「観念して行きましょうか、先輩、主1」

「いだだだだだ!!てめっ、それが先輩に対してとる態度かこのヤロー!!」

「いだだだだだ!!朝ごはん出るううううう!ごめんなさい歩くからああああ!!」


沖田と主1はそのまま土方により引きずられていった。上手く逃れた主2は「頑張れー」と人ごとのように手を振り見送る。そしてふとその光景をくすくすと笑っているミツバと目があった。主2はミツバに話しかける。


「賑やかでしょう?」

「えぇ、本当に」


ミツバが楽しそうに笑うので主2も思わず微笑む。だがミツバの目線が立ち去っていく土方の背中に向けられていたことに主2は気づいていた。だが主2はそれを気づかなかったフリをする。


「あ、主2ちゃんはうちでお茶でもどうぞ?まだ道場には戻らないんでしょう?」

「えぇ。さすがミツバさん。話が分かりますね」


そうして主2はいつものニヤリとした表情をすると、密かに持ってきていたお菓子を取り出しながら沖田家の敷地へと上がっていった。
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