short

□Raining
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(!caution!)
※レン→→→リン
※レンが若干病んでる
※レン視点・現代パロで血の繋がってない義理の姉弟設定です
※DV & BAD END(悲恋) 注意
※直接的な表現はないのでR指定はつけませんが、苦手な方はご注意ください












「……ねぇ、今なんて…?」




ザーザーと降る雨が絶え間なく地面に叩きつけられて

雨音のカーテンが、二人の声がかき消していく。



雨粒が容赦なく目に入って、君の表情が霞んで見えないのが一層怖かった。







本当は聞きたくないクセに、震える声で聞き返した俺に、

君が澄んだ声で繰り返す。





「もう終わりにしましょ?そう言ったの」






「…そんな………嫌だ!!どうして!?なんでだよ、リン!?」


きっと俺は世にも滑稽で、情けない顔をしているだろう。








…雨の隙間から見えた君は微笑んでいた。









― Raining ―












君と初めて出会ったのもこんな雨の日だった。






一ヶ月ぶりに、珍しくアルコール臭がしない親父が話しかけてきたと思ったら、

そんな時ばかり父親面で、嫌がる俺をリビングまで引きずっていった。





いつもはビールの空き缶や酒瓶が散乱しているリビングは、何故か今日に限って、小綺麗に片づけられていて


テーブルの向こう側には、少し派手めな知らない女の人と、その影に隠れるようでよく見えなかったが、俺と同い年くらいの女の子がいた。





雨音が耳に絡み付いて、俺は始終不機嫌だったけど


そんな俺とは対照的に、親父は上機嫌で話し続ける。





「新しい家族を紹介するよ、レン。こちらが今日からお前の母さんになる人で…」



新しい家族なんて要らない

どうせ死んだ母さんの代わりになる、新しい家政婦でも見つけたんだろ?

偽物の家族なんて必要ない。





そう思っていたのに…。






「で、こちらがお前の姉さんになる、リンちゃんだ」


少し困ったように笑って、母親の陰で少女がかるく会釈をした。





その瞬間、俺の中で時が止まった。





「…リンちゃんはお前より一歳年上で……」

親父の話す声なんてまるで耳に入らなかった。




絹糸のように艶やかで細い髪が、肩に散らばる

華奢な身体に、震える長い睫毛、所在なさげに揺れる大きめの瞳


そして、袖口や襟ぐりから透けるような肌が覗いていて、ところどころ薄紫色の痣になっていた。


俺がその痣を凝視していることに気づくと、少女は曖昧に笑った。

そして袖を少し引っ張るようにして痣をさりげなく隠す。

その一連の動作が儚く美しかった。








その時、

この人は俺が守ろうって思った。








リンは戸籍上、俺の義姉になった。


でも俺は決して[ 義姉さん ]なんて呼ばずに、[ リン ]と呼んだ。


だって義姉さんだなんて思ったことなんて一度もなかったから。


リンはリンだったから。







最初は顔色を窺うようにしていたリンが、少しずつ笑うようになった。

花が開くような笑顔に見惚れた。



親からの理不尽な暴力からも守った。

その分俺の痣が増えたけど、むしろ誇らしくて気持ちがイイくらいだった。



リンが笑ってくれるのが嬉しくて、そのためならば何でもした。


リンが、俺の生活の中心になった。








飲んだくれの親父はスグに本性を出し、あの派手めな女と遊び歩いていたが、そんなことどうでも良かった。






だって、俺、生まれて初めてやるべきことができたんだ。




母さんが死んで、親父はほとんど遊び歩いていて滅多に帰ってこなかった。

たまに帰ってくると飲んだくれて、俺を虫けらでも見るような目で見下ろして、

戯れに、痣が出来るほど蹴ったり殴ったりを繰り返した。


俺はいつもひとりだった。


誰にも必要とされなかった。






でも、今はリンがいる。


リンが必要としてくれるような男でいたい。


リンさえ傍にいてくれれば、他に何もいらない。



そう思った。












初めは、リンが傍で微笑んでくれるだけで良かった。


それなのに、どんどん欲が出た。




リンに触れたい


あの折れそうな、華奢な身体を抱きしめたい


薔薇色の柔らかそうな唇にキスをしたい


あの細い首筋に噛み付きたい


何もかもめちゃくちゃにして俺のものにしたい


俺だけのものにしたい



際限なく湧く、ドロドロとした欲に、身を任せるのは気持ちよかった。






初めはリンも

「血が繋がっていなくても、あたしたちは姉弟なのよ?」

なんて言って、抵抗したが



「だって、リンを愛してるんだ」

そう言って強引に押し倒してキスをすると、やがておとなしくなった。





諦めたような目で笑うのが少し悲しかったけど、

いつかきっと、リンだって俺の気持ちをわかってくれると思った。





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