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□Chocolate Chips Cookie なんかきっと彼には似合わない
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「は?」
「ダメなら、俺の作ったカップケーキと、リン先輩のクッキー、交換しません?」
一体、何を頼んでくるのかと思えば…こんなこと?てかクッキーが欲しいなんてどんだけ子供なのよ?
そう思って呆れた顔をするが、相変わらず目の前の少年はにこにこ笑っている。
なんだか急に馬鹿馬鹿しくなってしまって
「そんなにクッキーが好きなら、ウチのクラスの女子に頼んであげるわよ?アンタ結構、上級生の中では可愛いって評判だし、頼んだらあたし以外の女子全員がくれるわね」
そう言った途端…
目の前の少年が急に真面目な顔になった。そしてその瞬間、今度は彼に腰を抱かれて引き寄せられて、耳元で低い声で囁かれる。
「先輩って結構鈍いんですね。てか…鈍いフリしてるだけなのかな?」
「……えっ?」
いつもの子供っぽい彼とは全然違う雰囲気と低い声に、戸惑いが隠せない。心臓が壊れそうなくらい大きな音で鳴っていて、耳障りだ。とっさにせめて身体を離そうとするが、手首と腰を掴まれていて、逃げることすらかなわない。……真剣な瞳に縫い止められて、視線をそらすことすらかなわなかった。
「俺、[ リン先輩が作った ]クッキーが欲しいんです。俺が言ってる意味…わかりますよね…?」
そう言って、彼があたしの耳たぶに、軽くリップ音をたてて、突然キスをしたので、全身が指の先まで、かぁっと熱くなった。そして思わず声をあげそうになって……彼に口を押さえられ、やっとのことで悲鳴を飲み込んで堪えることに成功した。
そしてその直後、するりと彼があたしから離れていき…今のこの一連の流れなんて全くなかったかのように、ころっと表情を変えて、無邪気に笑って、こう言った。
「ね?だから、俺の作ったカップケーキと、リン先輩のクッキー、交換しましょうよ?」
小首を可愛らしくかしげる後輩の少年に、どう考えても勝てる気がしなくって……あたしはとうとう観念した。
「わ、わかったわ。交換しましょ。…あたしも…別にカップケーキ嫌いじゃないし…」
あたしがごにょごにょと口の中だけで言った途端、彼の表情がぱぁっと明るくなり、
「やった!ありがとうございます、リン先輩!じゃあ、放課後、俺、屋上で待ってますから!」
なんて言って、ぶんぶん手を振り、元気な子犬さながらに元気に走り去ってしまった。
嵐のように彼が去ってしまった後
あとにぽつんと残されたあたしは…
未だに熱を持った耳たぶを触って、ヘナヘナと力なく壁にもたれ掛かった。
一体何だったの…?
てか、動き方もまるで無邪気な子犬みたい……
いや…違う……か
「あの子………無邪気な子犬なんかじゃないわ。きっと、腹黒狼よ…」
思わずそう呟いたあたしには
なんとなく……これからも、こうやって、
子犬の皮を被った狼みたいなあの少年に振り回されていくのかも知れない
なんていう…そんな予感があったりした。
年下なんか興味ない
あんな子供に…[ 恋 ]したりしない
このあたしが、年下なんかに主導権なんて取られてなるものですか!
心の中でそう叫んで、必死に冷静になろうとするあたしの心とは裏腹に
あの子が口付けた耳朶だけが、未だ熱をもって、甘くしびれていた。
― Chocolate Chips Cookie なんかきっと彼には似合わない ―
某サイト様で素敵すぎる後輩レンくん×先輩リンちゃんを読ませて頂いて、すっかり年下攻めに目覚めてしまいました
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