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□なんちゃって Baby Panic
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そこには部屋に籠もっていたハズのレンが立っていた。腕組みをして、どこまでも冷ややかにこちらを見ている。



リンは信じられないという表情で目を見開き、掠れた声で呟いた。


「レ、レン……どうしてココに…」






それには答えず


「最近、いやに俺を避けるからさ?おかしいとは思ってたんだけど……そういうことか」


と、氷のような冷たい声で呟くと、レンはつかつかとリンに歩み寄り、その細い腕を掴み、強引に引き寄せる。




「立てよ、リン?」


「…ゴメ…ンなさい…」


「今、どんな気分だよ?なぁ?今、リンがどんな表情してるのか、その顔、ちゃんと俺に見せてくれよ!?」


「…ゴメンなさい!ゴメンなさい!ゴメンなさい!!」


泣きじゃくるリン詰め寄り…そして彼女の細いあごを乱暴に掴むレンを、カイトは後ろからとっさに羽交い締めにする。







「レン、止めなよ!」


「五月蠅い!!カイト!!お前には関係ないだろ!?」


カイトはレンに乱暴に振り払われるが、それでも必死にしがみつき


「た、確かに関係ないかも知れないけど………でも、リンちゃんのお腹には……!?」


そう言うと……それはそれは憎々しげに、レンは吐き捨てるように、こう言った。


「んなこと知ってるよ!リンのお腹には……



















俺が大事に取ってあったおやつのバナナが30本分、まるまる全部入ってるんだろ!?」






「え………?」






固まるカイトに、レンがイライラした口調で繰り返す。


「だからー!リンが俺の秘蔵のバナナ、全部食っちゃったんだろ!?知ってるし、そんなこと!」





「え?え?…リンちゃん?」




その瞬間の足下で、リンが一層大声をあげて泣きじゃくる。






「ゴメンなさーい!だって、レンの机の下に見慣れない段ボールがあったから……」

「あったから、何だよ?」

「…えっと、なんかすごく気になっちゃって…開けてみたら…」

「俺がネットで取り寄せた、入荷待ち三ヶ月は必須、[ 王様のスーパーデリシャスエクセレント・バナナ ]を見つけたと…?」

「うん…で、あんまり美味しそうだったから一本だけもらおうと思ったんだけど………美味しすぎて止まらなくなっちゃったんだもん!!」

「止まらなくなったって…ふざけんなよ!!」

「だから謝ってるでしょ!!?」

「謝って済んだら警察は要らねーんだよ!!…てか、お前、俺の部屋の段ボールとか勝手に開けんなよ!」

「だってぇー!……もしかして、その段ボールの中に、レンのえっちな本とかが隠してあるのかなーって思って…」

「……!!?じゃ、じゃあなおさら見るなよ!」

「…だって……だって、それ見たら、レンがどんな女の子が好きなのか…わかると思ったんだもん……リンが…レンが好きになってくれるような女の子になるために参考にしたかったんだもん…」

「…リン……?」

「…あたし…胸も小さいし……可愛くないし、綺麗でもないし、色気もないから………レンに…ちゃんと女の子なんだって意識してもらえるように頑張りたかったんだもん…」






両手で顔を覆って泣くリンの腕を、静かに掴んで外すと……

レンは…涙をたたえたリンの瞼にそっとキスをした。





「バカリン…」






「…バカって…そんな言い方…」

「いや、リンはバカだね。そんな本、俺が持ってるハズないじゃん?だっていつだって俺の傍には世界一可愛い女の子がいてくれるんだぞ?んなもん必要ねーじゃん」

「…??」

「だ、だーかーらー!!俺にとってはどんな女より、リンが一番なの!リンが理想の女なの!てか…俺は…リンにしか好きじゃないし、リンにしか勃たないし、リンにしか欲情しないんだよ!!言わせんな、恥ずかしい!!」



顔を真っ赤にし、少し肩で息をするレンに、リンが勢いよく抱きついて押し倒した。


「レン…!!」


抱きつかれたままレンが器用に体勢を変え…いつのまにか、今度はリンがレンに押し倒されているような格好になる。






「な?これで、俺の気持ち、わかっただろ?」

「でも…でも、リン、おっぱい小さいし…」

「バカ…貧乳は正義なんだよ!それに、そのままでもリンは十分可愛いからいいの!」

「でも…」








「あのー?」







「てか、俺はそのままで十分だけど…そ、そんなに、リンが気になるって言うなら?…俺が大きくしてやるし…」

「レン……!!」







「あのー?リンちゃーん?レンくーん?」







「「うっさい!バカイト!!」」

「てか今、リンと愛を確かめ合ってるとこなんだから邪魔するなよ!」

「ゴメンね、カイ兄。でもちょっと空気読んで欲しいな?」







そう言って、あっさりカイトを切り捨てると、リンとレンはまた絡み合って、いちゃこらモードに戻ってしまった。



気がつけばカイトだけ、また完全に部外者だ。








…ち、ちくしょーーーー!!!!


つわりでも何でもなくてただの食べ過ぎ、胃もたれじゃないかーー!!!




てか、またか…!


またこの展開なのか!!!!?









明らかにデジャブを覚えるその光景に、


カイトは力なく膝をつき、その場に崩れ落ちたのだった。












「…でも…やっぱりゴメンね?レン」

「いいよ、もう怒ってないし」

「でも!…リン、ちゃんと弁償するよ?リンがもう一回、あのバナナ注文して…!」

「だからもういいんだって?俺、元々、リンと一緒に食べようと思って買ったヤツだったし」

「…ゴメンなさい」

「もう謝るなって?な?……じゃあさ…バナナの代わりに、俺、リンが食べたいなー?なんて?」

「………!!!?」

「…ダメ?」

「…えっと…えっと………………………ダメじゃないです…」









― なんちゃって Baby Panic ―











リンとレンはこうやってナチュラルに(ry というか、いい加減カイトが可哀想すぎる…




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