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□なんちゃって Baby Panic
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※レンリン(ちょっとだけ病んでレン)
メイコもミクも出かけている。レンも自分の部屋に籠もったまま。
そんなこんなで、珍しくリビングにはカイトとリンの二人だけだった。
思い返せば、普段、リンの傍には必ずレンがいたような気がする。その所為もあってか、今まで、なかなかカイトとリンという組み合わせで、しかも二人っきりのシチュエーションに遭遇することもなく……じゃあ、逆に今日に限って何故レンはリンの傍にいないのか…と、正直言って、カイトはなんとなく気まずい気分になってきていた。
カイトは、読んでいた文庫本から、ソファーに横になってぼんやりとテレビの画面を見つめるリンへと、そっと視線を移す。テレビはありがちなバラエティ番組を無意味に垂れ流し、リンは笑いもせず、ぴくりとも動かず、ただそれを無表情で享受する。
明らかにリンが普段より元気がないような気がするし……リンの肌が元々白いのは知っているが…今日は、白を通り越して青白く見えて…それもますますカイトの不安を煽っていた。
この空気を払拭したい!
そう思ったカイトは勢いよく立ち上がってキッチンへと向かう。そしてお得意の[ バナナとアイスのキャラメルがけフレンチトースト ]を作り始めた。
そんなに手間がかかるメニューではなく、それは数分で出来上がる。簡単だけれど美味しい、カイトの十八番料理だ。
彩り良く盛りつけながら、我ながら美味しそうかも、なんて思いつつ、カイトはソファーの陰にいるリンに声をかけた。
「リンちゃーん、おやつ作ったから一緒に食べよう?」
このメニューはリンもお気に入りで…きっとコレならリンも元気が出るハズ!…そう思っていたのだが………
返ってきた返事は意外なものだった。
「…要らない」
「え?」
普段のリンならあり得ないこの返事。いつもなら他人の分まで欲しがるくらいなのに…これはますますおかしい。
「食欲ないから、今は要らないや。ゴメンね、カイ兄…なんかちょっと気持ち悪くて…」
そんなことをぼそぼそ話すリンの鼻先に
「そんなこと言わないでさ。食べてみたら意外と元気出るかも知れないし?」
と、カイトがフレンチトーストの乗った皿を差し出したその時……
「!!!?」
突然口元を押さえて、リンが洗面台に向かって走り出す。そして苦しそうに眉を寄せ、ゲーゲーと胃液を吐いてしまった。
「リンちゃん、大丈夫?」
どうして急に嘔吐いたりしたんだろう…?
確かに具合は悪そうだったけど…
いや…
もしかして食べ物のにおいに反応して……?
心配そうに背中をさするカイトには、思い当たることが一つだけあった。
「リ、リンちゃん、もしかして…!?」
その途端、真っ青な顔色のまま、涙目でリンが縋り付いてきた。
「カイ兄…このこと、レンには言わないで!!」
「で、でも……相手はレンなんでしょ…?」
「…………」
「…ま、まさか、違うの!?」
そんなカイトの質問には答えず
「お願い…!あたし……あたしレンに嫌われたくないの……」
そう言って腹部を抱きしめるようにして、リンはその場に泣き崩れた。
「リンちゃん……」
一人肩を震わす妹をとっさに抱きしめようとした時……突然、背後から、低い声が聞こえた。
「へー、そういうこと…か」
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